研究課題
2022年度は第一の課題として極端紫外領域超短パルス光を用いた過渡反射率計測を行った。試料はシリコン基板上に蒸着したビスマス薄膜を用いた。実験で得られた過渡反射率は遅延時間0において、ポンプ光の照射によって伝導帯へ励起されたキャリアに由来する立ち上がりを示した。その後、励起キャリアの緩和に伴い、ピコ秒の時間定数で反射率がポンプ光照射前の状態へ戻ることがわかった。本課題の遂行により、極端紫外領域の過渡反射率信号の取得のために適切な光学配置・条件を決定できた。第二の課題として、有機薄膜太陽電池を対象とした時間分解計測を行った。試料は、従来の有機薄膜太陽電池に絶縁体層を導入することで高い光電変換効率と高速応答性を持つMISMセル(M:ITO電極、I:絶縁体層、S:半導体層、M;銀電極)を用いた。当初、光電流計測を行う予定であったが、MISMの超高速光応答に関する先行研究が皆無であったため、可視光超短パルス光をポンプ光・プローブ光として用いた時間分解反射率計測を行った。実験で得られた過渡反射率は、遅延時間0において半導体層のドナー分子に由来した励起子の生成に由来する立ち上がりを示した。その後、光照射後のフェムト秒時間領域で項間交差または電荷移動に伴う緩和が、ピコ秒時間領域では励起子・励起子衝突による緩和過程が観測された。さらに絶縁体層を含まない従来型の有機薄膜太陽電池と比較したところ、いずれの緩和過程も緩和時間が長くなることが分かった。フェムト秒~ピコ秒の時間領域で起きる緩和過程が長くなる要因として、セル内を瞬時に伝搬可能な絶縁体層内の分極電場の効果を検討している。本課題の遂行により、フェムト秒~ピコ秒の時間領域におけるMISMセルの光励起キャリアダイナミクスに関する知見が得られた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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