研究課題/領域番号 |
20H02706
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西 弘泰 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (70714137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | プラズモン共鳴 / プラズモン誘起電荷分離 / 光触媒 / 金属ナノ粒子 / 光ナノ加工 |
研究実績の概要 |
本研究では、高次のプラズモン共鳴モード(多重極子振動モード)やバンド間遷移の利用、半導体フリーの光触媒系の構築などの、これまでにない革新的な設計指針でプラズモニック光触媒を高効率化することを目的としている。昨年度は、銀ナノキューブを担持した酸化チタン電極を用いたプラズモン誘起電荷分離の内部量子収率が、ナノキューブのサイズの増大に伴って向上することを見出し、その量子収率の向上が高次のプラズモン共鳴モードに起因することが示唆された。2021年度は、さらに詳細な電磁場解析によって、特定の高次のプラズモン共鳴モードが、一次の振動モード(双極子振動モード)よりも短波長側(高エネルギー側)の光を吸収し、ナノキューブと酸化チタンの界面付近に電場が局在化することで、高い電荷分離効率が達成されている可能性があることを明らかにした。プラズモン誘起電荷分離では、プラズモニックナノ粒子が吸収する光子エネルギーが高い方が原理的に内部量子収率が高くなる。また、局在電場の強い部分で電子正孔対が生じるとされており、励起された電子の平均自由行程の観点からは、プラズモニックナノ粒子と酸化チタンの界面付近により近い部位で電場が局在化する方が有利と考えられる。これら2つの要因によって高い電荷分離効率が達成されたことを示し、光子エネルギーと同時に電場が局在化する部位を制御するという、新しいプラズモニック光触媒の高効率化の設計指針を示すことができた。 一方で、プラズモン誘起電荷分離とガルバニック置換反応によって、酸化マンガン助触媒を金ナノキューブ上に部位選択的に導入する手法を確立し、プラズモニック光触媒の効率が、助触媒の導入部位に大きく依存することを明らかにした。その他にも、酸化モリブデンを用いた可視領域でのプラズモン誘起電荷分離に関する成果も得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高次のプラズモン共鳴モードを利用したプラズモン誘起電荷分離をはじめとした研究成果は順調に得られており、新たに助触媒の導入部位を制御する重要性なども明らかにすることができた。一方で、還元析出型光ナノ加工による半導体フリーの金-白金ヘテロナノ粒子の作製については、部位選択的に導入される白金が酸化物として析出していることが明らかになった。その原因の検証などにより、論文としての成果発表に関してはやや遅れが生じている。しかしながら、研究を遂行する中で、酸化鉛が偏光照射下で異方的に、周期的なパターンを形成しながら成長することを新たに見出し、これまでになかった光ナノ加工技術が確立できつつある。以上の点から、総合的に本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、「現在までの進捗状況」に記載した、還元析出型光ナノ加工によって部位選択的に導入した白金が、酸化物として析出する原因を明らかにするとともに、白金以外の金属(パラジウムなど)への適用し、作製したナノ構造の光学特性や光触媒特性、電極触媒特性を評価する。プラズモン誘起電荷分離とガルバニック置換反応の組み合わせによる助触媒の部位選択的導入については、導入部位だけでなく、導入量、結晶構造、化学組成などの影響も検証し、酸化マンガン以外の助触媒への適用を目指す。また、ガルバニック置換反応を介することなく、直接助触媒を部位選択的に導入する手法も検討する。新たに見出した酸化鉛の偏光照射下での異方成長については、その機構を明らかにし、円偏光を利用したキラル構造の作製などへ研究を展開する。また、酸化鉛以外の光触媒活性のある化合物半導体への適用を試み、光触媒の高性能化・高付加価値化に取り組む。
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