研究課題
本年度は、3回対称性をもつ立体π共役分子であるトリプチセン誘導体Trip-Phzをもちいて二次元構造体作製の条件検討を重点的に行った。昨年度、Ag(111)の清浄表面上にTrip-Phzを蒸着させたところ、単結晶中で見られたハニカム格子が形成されていることをSTMによって明らかにしている。しかし、ハニカム構造の他に別の構造をもつドメインも形成されてしまい、光電子分光測定で電子バンド構造を測定する際の問題点であった。そこでカリウムやセシウムなどのアルカリ金属をTrip-Phz分子単層膜の上に蒸着したところ、広範囲にわたってハニカム構造が観測された。これは、電子受容能をもつTrip-Phz分子単層膜にアルカリ金属をもちいてホールドーピングしたことに相当し、その結果、分子間相互作用が強くなりハニカム格子が優先して形成されたと考えられる。試料作製条件の検討と並行して、分子性二次元構造体の電子バンド構造観測のために、別予算で導入したスピン検出器をそなえた角度分解光電子分光装置へ、高輝度ヘリウムおよびキセノン光源を導入し、その立ち上げに注力した。キセノン光源をもちいることで、よりシャープなスペウトルが得られるようになった。さらに分子性二次元構造体についての理論研究も行い、分子内相互作用および分子間相互作用の符号と相対比を変化させることでフラットバンドの由来やその位置が系統的に変化することを提唱した。特に分子性三角格子にスピン軌道相互作用を導入すると、ゼーマン型にスピン分裂した軌道を持つことを示唆する興味深い結果を得た。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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