研究課題/領域番号 |
20H02708
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
吉田 幸大 京都大学, 理学研究科, 特定准教授 (10378870)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 金属-有機構造体 / 配位高分子 / ヘテロ接合膜 / 全固体プロトン整流素子 / プロトン-電子混合伝導 / プロトン-電子相関 / 次元クロスオーバー構造変換 / 外場応答 |
研究実績の概要 |
プロトン伝導-電子伝導相関の実現ならびに制御において、強いプロトン-電子カップリングを有するπ平面金属錯体の設計指針の導出は不可欠である。レドックス活性なN,S-ドナー配位子から成るπ平面ニッケル錯体の紫外-可視吸収スペクトルならびにサイクリックボルタモグラムのpH依存性を調査した。類似N,N-ドナー配位子から成るπ平面ニッケル錯体に比べ顕著なプロトン共役電子移動挙動を観測した。さらに、この実験結果が密度汎関数理論(DFT)計算と定性的に一致することを確認した。また、ナフトキノン部位を有するジチオレン配位子を用いて、単成分分子性結晶としては最高レベルのプロトン-電子混合伝導性を有するπ平面白金錯体の開発にも成功した。 塩基性部位を有する回転可能な配位子を新規合成し、Zr(IV)金属イオンに配位させた金属-有機構造体(MOF)を作成した。ルイス塩基サイトを持たない類縁配位子から成るMOFと同形構造を有しているが、プロトン伝導性ならびに吸着特性(窒素、水蒸気)は全く異なる挙動を示した。現在は、固体NMR測定から、配位子の分子回転とプロトン伝導挙動の相関について調査している。 プロトン整流の実現に向けて、プロトン伝導性MOFと水酸化物イオン伝導性層状複水酸化物(LDH)の自立型メンブラン(free-standing membrane)の合成手法を確立した。さらに、両メンブランをパラジウム電極で挟むことにより、高湿度下(90%RH)でプロトン/水酸化物イオンの濃度勾配に起因した整流特性を実現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
プロトン-電子カップリングの化学制御実現のためには、従来のような主に金属イオンが酸化還元を担う金属錯体よりも、レドックス活性な配位子から成る金属錯体を用いるべきである。今年度は、レドックス活性なN,S-ドナー配位子から成る金属錯体に焦点を絞り、ニッケル錯体が優れたプロトン-電子カップリングを示すことを見出した。なお、この金属錯体はπ平面性を有することから、キャリア注入による電子伝導性発現も期待できる。また、単成分分子性結晶としては最高レベルのプロトン-電子混合伝導性を有するπ平面白金錯体や、酸性部位を有する白金錯体から成るプロトン伝導性マトリックスを用いたπ平面電子ドナー分子による電子伝導性ワイヤーの構築にも成功している。 プロトン伝導性MOFと水酸化物イオン伝導性LDHから成るヘテロ接合膜が、整流比100以上の優れたプロトン整流特性を有することを見出した。従来用いられてきた有機ポリマーヘテロ接合膜に比べ設計性が高く、両メンブランの化学置換や化学修飾による整流比のさらなる向上が期待できる。さらに、両メンブランは高結晶性を有するため、高整流性ヘテロ接合膜の系統的な開発に向けた構造-特性相関の解明にも適している。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に引き続き、特にレドックス活性配位子に着目して、高いプロトン-電子カップリングを有するπ平面金属錯体の開発を推進する。さらに、プロトン-電子カップリングを念頭に置いた分子設計に基づき、高プロトン伝導性ならびに高電子伝導性を有する金属錯体の開発を目指す。プロトン整流性ヘテロ接合膜の開発においては、両メンブラン(プロトン伝導性MOF、水酸化物イオン伝導性LDH)に対して化学置換や化学修飾を行い、整流性の向上を目指すとともに、プロトン/水酸化物イオン濃度・移動度やpKaと整流性の相関関係の抽出を目指す。
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