研究課題
有機三角格子スピン液体kapper-(ET)2M2(CN)3 [M=Cu, Ag]では、陰イオン層の架橋CN基がディスオーダーしているため、そのようなディスオーダーの無いスピン液体の開発が望まれている。2種類の金属イオン(Cu1+イオンとAu1+イオン)を組み合わせることによりCN基を配向させて、陰イオン層におけるディスオーダーが無い新規有機三角格子モット絶縁体kapper-(ET)2Cu[Au(CN)2]Cl塩を開発した。単結晶試料を用いた伝導度測定により低温まで半導体的な挙動を示すこと、およびSQUIDによる磁化率測定により2Kまで磁気相転移を示さないことを確認した。陰イオン層にディスオーダーの無い新規有機三角格子スピン液体候補物質として論文で報告した。kapper-(ET)2Cu[Au(CN)2]Cl塩の試料作成は電解酸化法によって行い、支持電解質の組み合わせや溶媒及び作成温度や電流値を変えることにより、様々な合成条件を検討しているが、いまだに少量の副生成物として得られており、今後さらに検討が必要である。また、有機三角格子モット絶縁体kapper-(ET)2Cu2(CN)3 を用いて、数百ナノメートルの厚さの有機薄膜単結晶の合成を試みた。電解酸化法により、特に印加する電流の大きさや時間および結晶作成温度を最適化することにより、良質な薄膜作成の条件を見出した。ポリエチレンナフタレート(PEN)などの基板極上に有機薄膜試料を貼り付けて、伝導度の温度変化を測定し、基板と試料の熱収縮の差による影響を調べた。
2: おおむね順調に進展している
陰イオン層におけるディスオーダーが無い新規有機三角格子モット絶縁体kapper-(ET)2Cu[Au(CN)2]Cl塩を開発し、スピン液体候補であることを示した。また、有機三角格子モット絶縁体kapper-(ET)2Cu2(CN)3 の単結晶薄膜合成に成功した。デバイス作成に向けての準備も順調に進んでいる。
kapper-(ET)2Cu[Au(CN)2]Cl塩の合成方法を改良し、良質な結晶を効率よく得る方法を検討する。リソグラフィーによる電極パターンを作製した基板上に薄膜単結晶を貼り付けてデバイスを作成する。モット絶縁体のFETの場合、モット転移近傍において電界効果が顕著に現れやすい。そのため、外部からの圧力印加や基板の熱収縮を利用して試料にひずみを加えることにより、モット転移近傍に導いたうえで、電界効果と組み合わせて相制御を行う。そのため、圧力・温度・電場という複数のパラメータを調整して、詳細な物性制御を行う。
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