三角格子上にスピンが局在し、隣接スピン間に反強磁性的相互作用が働く場合、幾何学的なフラストレーション効果によって極低温まで長距離の磁気秩序が抑制された量子スピン液体状態が期待されるが、これまでに発見された有機三角格子スピン液体候補はすべて結晶構造に乱れを伴っており、フラストレーションと乱れの効果が明確でない。本研究では構造に乱れの無い三角格子をもつ有機スピン液体の開発を目指し、有力物質の合成に成功した。各種磁気測定を徹底的に行い、量子スピン液体候補であることを見出した。ただし、陰イオン層に少量のCu(II)イオンが磁性不純物として混入していることも明らかになった。
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