最終年度では、これまで追求してきた分子分散状態でも高効率発光するESIPT型蛍光体の合理的分子設計の開拓に加え、分子分散状態でホスト液晶やホスト高分子にドープできる臨界ドープ濃度を高める設計の探索をおこなった。その結果、13wt%まで室温液晶5CBにドープでき、その状態での蛍光量子収率が56%という卓越した2-(2-hydroxyphenyl)benzothiazole (HBT)誘導体の開発に成功した。しかしながら、この混合液晶材料の自然放射増幅光(ASE)特性評価をおこなったところ、14%ドープでき、32%の蛍光量子収率を示すアルキニル置換HBT誘導体と比較して、ASEが起こる励起光強度の閾値が著しく大きく、望ましくないことがわかった。発光に関わる光子密度を上昇させるという単純な方法では、ASE閾値を下げるのに有効な戦略とはならないことがわかった。 アルキニル置換HBTは、ある装置構成において 約3 mJ/cm2 の閾値で狭線化し、 ASE発生には有望な化合物であることがわかった。励起光の向きの変調により、光路長を大きくすることで、この閾値は1 mJ/cm2程度までさらに低下した。今後、電場変調可能な色純度の高い光源としての応用展開が期待される。
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