本研究では、励起状態分子内プロトン移動(ESIPT)型蛍光体と呼ばれる有機蛍光化合物に関して、その「非着色/可視域発光性・高い混和性・非濃度消光」という特徴に注目し、液晶中への蛍光ドーパントとしての高い適正を見出した。ESIPT化合物で問題視されていた、溶液中(~液晶を含む流動媒質中)での低い蛍光量子収率(Φ)という課題の克服が必要であったが、共役置換基の導入が流動媒質中でのΦの向上に効果的であることを発見し、これを量子化学計算により理由付けした。本研究で開発したESIPT化合物をドープした室温液晶は、偏光発光性や電場応答性の自発増幅光(ASE)など、新しい液晶光学素子の可能性を提示した。
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