本研究課題『特異な電子状態を発現するナノカーボンの設計と創成』は、実空間での原子配置が一義的に確定できるナノカーボン構造の構築を目指した。PAHを構成ユニットとしてホモカップリングやクロスカップリング反応を駆使して、様々な結合位置をもつ一連の直接結合型PAH多量体の合成に成功し、それぞれのユニークな構造に由来する特異な機能の発現を明らかにした。大きな歪みエネルギーを駆動力とした反応や空孔を利用したホスト-ゲスト化学、不斉ねじれの発現、加熱による構造変換の制御など、シクロアリーレン特有の物性を見出した。本研究により、対称性の低下による電子機能の異方性化も端緒についた。
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