研究実績の概要 |
本研究は次の1-3を目的として実施した。各目的と得られた研究成果を示す。 1. 環境に対する応答として多様かつ効率的な運動様相の発現: まずSodium Dodecyl Sulfate水溶液に、自己駆動体である樟脳円板を置いた系について実験を行った。具体的には、プラスチック円板を樟脳円板の底面に接着することにより水面と接する樟脳円板の面積を変化させたところ、接触面積に依存して振動運動の振幅と最高速度が増加した。この結果より自己駆動体の底面で蓄積する物質量が振動運動の駆動力に反映されることが明らかになった(JPCB, 2021, 125, 1674)。次に相転移温度で表面圧(Π)-表面積(A)曲線が変化する両親媒性分子を用いた樟脳円板の自己駆動について実験した。その結果、Π-A曲線に依存した特徴的な運動様相を発現することに成功した(JPCB, 2020, 124, 5524)。その他、履歴現象を利用した駆動力分子の濃度反転による自律反転系や液滴系の往復運動系を構築した(PCCP, 2020, 22, 13123; Soft Matter, 2020, 17, 388)。 2. 可逆的な走化性を持つ自己駆動系の構築: クマリン誘導体と塩基との反応に基づいて、可逆的走化性の実験系を構築した。その結果、塩基量に依存して特徴的な可逆的走化性を示した。具体的には、少量塩基では連続運動、中量では可逆的走化性、大量では振動運動が発現した。これらについては現在論文にまとめているところである。 3. 自律的な非平衡の維持による持続的な自己駆動体の構築: 酵素反応の非線形性を利用した再生系を設計し、基礎実験を行っている。
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