研究課題/領域番号 |
20H02715
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
手木 芳男 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00180068)
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研究分担者 |
吉田 考平 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任助教 (20845789) [辞退]
藤原 正澄 岡山大学, 自然科学学域, 研究教授 (30540190)
松下 未知雄 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80295477)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | πトポロジー / 励起状態制御 / 電界効果トランジスタ性能 / ホール移動度 / 光耐久性 / πラジカル / 励起状態スピンダイナミクス |
研究実績の概要 |
本課題では、申請代表者らがこれまでに蓄積したπラジカルの励起状態の知見をもとに、分子内のπ電子軌道のつながり方を利用して励起状態のダイナミクスをスピン状態で制御することにより、高い光耐久性と機能性を有する革新的π電子材料を創生する事を目的とした。 昨年度までに、電子的安定化と溶解度向上を達成するためのtriisopropylsilylethynyl基(TIPS基)と超高速増強系間交差により光耐久性を向上させるphenylverdazyl基(安定ラジカル基)を、それぞれペンタセン骨格を挟んでパラ位とメタ位に連結したに2種類のペンタセン-安定ラジカル連結系の合成経路をほぼ確立できた。 本年度は、それらのスケールアップ合成と純度向上を達成した。さらに、それらの光耐久性の再評価と電界効果トランジスタ(FET)性能の評価を実施した。昨年度に明らかになった誘電損失による問題点の改良を加えた独自設計の櫛型電極を設計し、それを用いたFET素子を試作し、ペンタセン-ラジカル誘導体材料のホール移動度の測定に成功した。 その結果、両者のペンタセン-安定ラジカル連結系は、化学メーカーから有望な電子材料として市販されているTIPS-ペンタセン(TIPS基を、ペンタセン骨格を挟んで対象に2個有する代表的な有機半導体材料)と比較して100倍以上もの高い光耐久性(パラ体で約140倍、メタ体で約190倍)を達成する事に成功した。また、両者ともFET性能を有する事が確認でき、その特性からホール移動度等のFET性能を評価した。これにより、申請書に記載してあった研究目的の一つである「(1)トポロジカル励起スピン制御による高い光耐久性と機能性を有するπラジカルの創生」に成功した。 さらに、2021年度に予定されていた国際会議が延期され予算を繰り越したが、2022年度に当該の国際会議で上記の成果発表等を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請計画通りπトポロジーの異なる2種のペンタセン-安定ラジカル連結系を合成し、その光耐久性と有機半導体としての性能を評価した。その結果、これにより、申請書に記載してあった研究目的の一つである「(1)トポロジカル励起スピン制御による高い光耐久性と機能性を有するπラジカルの創生」に成功した。COVID-19による国際会議の延期などもあったが、繰り越した予算で予定していた成果発表は2022年度に実施できたので、研究は申請計画に沿って概ね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
概ね順調に研究は進行しているので、ほぼ申請計画通り研究を推進する。次年度は「新規πラジカル材料を用いた有機エレクトロニクス素子への展開」に主眼をおいて研究を実施する。ペンタセン-安定ラジカル連結系物性測定の方に重点を移して研究を遂行する。本年度に得られたデータの詳細な解析による結果の検討や、TIPS-ペンタセンやラジカル前駆体との比較検討を行い、ラジカル付加によるFET性能やホール輸送能に対する影響に関する知見をえる。また、本年度は電界効果トランジスタ素子を用いた電圧印加条件下でのTIPS-ペンタセンの光電流モニターの電気的検出ESR(EDMR)測定に成功し、ホール移動度とEDMR信号強度の相関に関する知見を得ることができた。次年度(最終年度)は、これらの知見を整理検討し、成果発表を行う。さらに、πラジカル材料を用いた有機エレクトロニクス材料としての新規な可能性を見出すことにも挑戦し、顕微EDMRによる素子評価や、スピントロニクス材料等への展開の可能性も探索する。
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