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2020 年度 実績報告書

芳香環ナノアーキテクト:パイ共役系の創る構造と空間の設計と機能への展開

研究課題

研究課題/領域番号 20H02721
研究機関東京工業大学

研究代表者

豊田 真司  東京工業大学, 理学院, 教授 (80207646)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード芳香環 / 大環状分子 / らせん分子 / 構造空間設計 / 分子機能 / 超分子 / キラル分子
研究実績の概要

芳香環の部品を組み合わせて分子の構造や空間を自在に設計し,新しい化学物質を創製する「芳香環ナノアーキテクト」の発想に基づき,アントラセンを集合,縮合した大環状およびらせん形パイ共役系化合物を対象として研究を行った.研究1年目は標的化合物の設計と合成法の確立を主な目的とした.
大環状化合物のテーマについては,芳香環大環状構造の構築を中心に研究した.必要なビルディングユニットである2,7-ジハロアントラセン誘導体の調製を効率化した.芳香族水素の位置選択的直接ホウ素化を利用することにより,従来法より短工程・高収率でユニットを合成することができた.カップリング反応を用いてユニットを連結し,大環状リング形分子を構築するための合成法および精製法を検討した.アントラセン以外のユニットとして,アクリドンを用いて鎖状および環状オリゴマーを合成した.
らせん形化合物のテーマについては,アントラセンをらせん形に縮合した化合物を合成し,構造や性質を研究した.白金触媒を用いたアルキンの環状異性化を鍵反応として,アントラセンを2から5個縮合した化合物を合成した.らせん構造の特徴をX線構造解析および密度汎関数法(DFT)により調べ,3個以上縮合した構造ではパイ電子間の顕著な相互作用が存在することを明らかにした.また,らせん反転の機構をDFT計算により解析し,立体障害および分子内相互作用と反転障壁の関係を解明した.3個縮合した誘導体では置換基を導入するとエナンチオマーが分割可能になり,ジフェニル誘導体のエナンチオマーは非常に強い円二色性および円偏光発光を示した.これらのキラル光学特性の特徴を分子構造と軌道の解析から考察した.アントラセンの酸化誘導体として,アントラキノンをらせん形に縮合した化合物の合成条件を検討した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大環状化合物のテーマについては,新しい経路でユニットを合成することができた.ユニットの効率的合成は今後の研究において重要な課題であり,一定の成果をあげることができた.
らせん形化合物のテーマについては,困難なことが予想されたがユニットを5個まで縮合したらせん形化合物の合成に成功した.ユニットを3個縮合した誘導体のエナンチオマーに成功し,キラルなパイ共役系芳香族化合物として特異な性質を示すことを明らかにした.成果の一部は学術論文として発表し,一部は当初の計画以上に進んでいる.
全体としては計画に基づいておおむね順調に研究が進展している.

今後の研究の推進方策

研究期間1年目の成果に基づいて,標的化合物の合成法の効率化,構造や物性の詳しい解析,構造の多様化を目標として,基本的に当初の計画通りに研究を推進していく.
大環状化合物のテーマについては,効率的に合成できたユニットを用いて,リング形化合物の本格的な合成に取り組む.ユニット合成法の汎用性を利用して,種々の置換基をもつ誘導体を合成する.大環状構造の周辺拡張と平面化を実現するために,ジベンゾアントラセンユニットの活用を検討する.大環状構造を複合化するために,ケージ形構造の構築に取り組む.
らせん形化合物のテーマについては,基本合成反応を応用して,長いらせん形化合物や置換基を導入した誘導体の合成する.1年目は1例だけであったエナンチオマーの分割例を増やしていき,分子構造とキラル光学特性の関連性を解明していく.

備考

らせん分子の論文に関する新聞記事, Web記事あり(科学新聞2021年2月26日)

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Construction of Helical Structures with Multiple Fused Anthracenes: Structures and Properties of Long Expanded Helicenes2021

    • 著者名/発表者名
      Fujise Kei、Tsurumaki Eiji、Wakamatsu Kan、Toyota Shinji
    • 雑誌名

      Chemistry - A European Journal

      巻: 27 ページ: 4548~4552

    • DOI

      10.1002/chem.202004720

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Complexation of an Anthracene‐Triptycene Nanocage Host with Fullerene Guests through CH???π Contacts2021

    • 著者名/発表者名
      Kajiyama Kazuki、Tsurumaki Eiji、Wakamatsu Kan、Fukuhara Gaku、Toyota Shinji
    • 雑誌名

      ChemPlusChem

      巻: 86 ページ: 716~222

    • DOI

      10.1002/cplu.202000816

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Multiple Fused Anthracenes as Helical Polycyclic Aromatic Hydrocarbon Motif for Chiroptical Performance Enhancement2020

    • 著者名/発表者名
      Fujise Kei、Tsurumaki Eiji、Fukuhara Gaku、Hara Nobuyuki、Imai Yoshitane、Toyota Shinji
    • 雑誌名

      Chemistry - An Asian Journal

      巻: 15 ページ: 2456~2461

    • DOI

      10.1002/asia.202000394

    • 査読あり
  • [学会発表] 複数のアントラキノンが縮合したらせん形芳香族ケトンの合成と構造2021

    • 著者名/発表者名
      森岡 梢、豊田 真司、鶴巻 英治、藤瀬 圭
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会2021
  • [学会発表] カップリング反応によるアクリドン鎖状オリゴマーの合成と大環状化2021

    • 著者名/発表者名
      小森 隆史,豊田 真司
    • 学会等名
      第14回有機π電子系シンポジウム
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.chemistry.titech.ac.jp/~toyota/

  • [備考] 東京工業大学最新研究成果記事(プレスリリース)

    • URL

      https://www.titech.ac.jp/news/2021/048942.html

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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