研究課題/領域番号 |
20H02722
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
庄子 良晃 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40525573)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ホウ素 / ルイス酸 / 骨格転位反応 / 発光 / 有機デバイス |
研究実績の概要 |
前年度までに、9-ボラフルオレン誘導体のB-C結合に、歪みアルキンが複数分子挿入する反応を見いだした。これにより生成した含ホウ素π共役マクロサイクルにおいて、分子内で強いボラン-オレフィン相互作用が働き、マクロサイクルのコンホメーションや反応性に大きく影響することを見いだした。ボラン-オレフィン相互作用は、三配位ホウ素化合物が関わる様々な有機反応の鍵となる相互作用であり、これを実験的に観測できたことは学術的価値が高い。さらに、得られた含ホウ素π共役マクロサイクルが特異な骨格転位反応を示すことも見いだし、電子欠損性ホウ素化合物に特有な反応性についての知見が蓄積されつつある。 新たな物質系として、反芳香族性π共役骨格のC-C結合をB-N結合に置き換えた(BN置換した)化合物の開発にも取り組み、BN置換シクロブタジエンおよびBN置換ペンタレンの合成に成功した。前者は、溶液中、室温で長寿命の遅延発光を示すなど、興味深い光電子特性を示すことを明らかにした。後者については、三重項エネルギーが高く、有機EL素子のホスト材料として利用できることも見いだした。 さらに、申請者らが開発した2配位ホウ素カチオンをホールドーパントとして用いたポリチオフェンの高効率ホールドーピングや、ホウ素カチオンの2量化による二重蛍光性テトラアリールジボラン(4)の合成などにも成功している。 基礎化学的な構造-物性相関や反応性についての検討から、電子材料の高機能化に関する研究に至るまで、多角的かつ多面的に研究を推進した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実績の概要に記載した通り、研究計画において主目的として設定した、電子欠損性ホウ素化合物を用いた連続的な炭素-炭素結合形成および切断反応の開発については、含ホウ素π共役マクロサイクルの形成および骨格転位反応を見いだし、順調に進行している。これに加え、新たなBN置換π共役化合物の開発と電子材料としての応用、ホウ素カチオンを用いたπ共役ポリマーの高機能化、ホウ素カチオンを原料とした新規ジボラン(4)化合物の合成と特異な発光特性の発見など、当初の計画を超えて、電子欠損性ホウ素化合物の構造、反応、性質についての研究を拡大しつつある。よって、研究の進展状況は「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、BN置換π共役化合物、ホウ素カチオン、テトラアリールジボラン(4)など、本研究で開発したそれぞれの物質系において、性質や反応性を深く探求する。特に、テトラアリールジボラン(4)については、B-B結合が芳香族置換基により高度に立体保護されているにもかかわらず、一部の求核剤と特異な反応を示すことを見いだしつつある。この知見に基づき、今後、複数のホウ素原子が共同的に働くことが可能な分子モチーフの開発にも取り組む。分子内および分子間で、複数のホウ素原子とその空軌道が関与した反応や性質を検討し、新たな物質変換反応の開発や機能創出を目指す。
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