研究実績の概要 |
本研究により得られた成果を以下に記載する。[1] 9-ボラフルオレン誘導体のB-C結合に歪みアルキンが複数分子挿入することにより生成する含ホウ素π共役マクロサイクルが示す特異な骨格転位反応のメカニズムを、実験・理論の両面から検討し、合理的な反応経路を導くことに成功した。この反応過程において、興味深いことに、ボリレンと等価な高反応性活性種が生成し、不活性なC-H結合に挿入していることが示唆された。この知見は今後、有機ホウ素化合物を用いた活性化反応を開発する上での足がかりになると期待される。また、[2] 前年度までに開発したジボリルアセチレン誘導体と、シクロペンタジエノン誘導体を用いたDiels-Alder反応により1,2-ジボリルベンゼン誘導体を合成した。この化合物の発光挙動を調べたところ、意外なことに、ごく低濃度条件においてもエキシマー発光が観測された。電子アクセプターであるホウ素ユニットが近接した構造が、高効率なエキシマー発光に寄与していることが強く示唆される。[3] 反芳香族性10π電子系からなるペンタレンのC-C結合を等電子的なB-N結合に元素置換したB4N4ペンタレン誘導体が、有機EL素子のホスト材料として有用であることを先行研究により見出している。このBN骨格に炭素π電子系を縮環させた、3種類のハイブリッド型誘導体を合成した。このうち、結晶状態において最も緊密な分子間接触を示した誘導体をホストに用い有機EL素子を作製したところ良好な素子性能が得られた。以上、ホウ素化合物を対象とした基礎化学的な構造-物性相関や反応性についての検討から、電子材料の高機能化に関する研究に至るまで、多角的かつ多面的に研究を推進した。
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