研究課題/領域番号 |
20H02725
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
高瀬 雅祥 愛媛大学, 理工学研究科(理学系), 准教授 (90516121)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 含窒素グラフェン / 曲面π電子系 / 芳香族 / 反芳香族 / ピロール |
研究実績の概要 |
本研究では、ピロールを基軸とするこれまでの合成化学的な知見に基づき、主に三つの次元性を有する含窒素ノカーボンの創出とその特殊構造に起因する機能開拓を行っている。主な研究テーマは以下の3つである。(1)様々な「曲面構造」を有する含窒素ナノカーボンの構築、(2)様々な「電子状態」を有する含窒素ナノカーボンの構築、(3)様々な「キラリティー」を有する含窒素ナノカーボンの構築。(1)について、嵩高い置換基を導入したアセナフトピロールを用い、既報のヘキサピロロヘキサアザコロネン(HPHAC)の同様の合成手法を用いて反応を行ったところ、 二重お椀型π共役系化合物となることを明らかにした。電子豊富なπ共役系化合物の一つとして、フラーレンとの相互作用を中性種ならびにジカチオン種を用いて調査したところ、ジカチオン種の方が強くフラーレンと相互作用することを明らかにした。また、湾曲構造を有しているにもかかわらず、ジカチオン種は大環状共役に基づく明確なグローバル芳香族性を発現することが分かった。(2)について、12個のエチル基を導入したHPHACを合成し、その会合能を評価したところ、溶液・結晶中において明確なπーπ相互作用は確認できなかった。一方、電荷移動錯体など、様々な酸化状態における単結晶構造を明らかにした。(3)について、プロペラキラリティーを有するプロペラ型分子の合成に成功し、円二色性吸収スペクトル円偏光発光スペクトルの観測にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍で実験が全くストップしてしまった期間があったものの、上述の研究成果を挙げることができ、2報学術論文を報告することが出来た。その他にも合成研究が期待以上に進んでいる課題もある事から、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「曲面構造」を有する含窒素ナノカーボンの構築に関して、合成に成功し、その結晶構造解析にも成功しているものの、その電子状態の解明にまで至っていないために論文報告できていない研究成果がある。そのため本年度はその基礎物性評価に力を入れたいと考えている。また同様に、「キラリティー」を有する含窒素ナノカーボンの構築についても、静的な吸収・発光スペクトル測定までは終えているものの、構造的特徴を主張する上で重要なダイナミクス解析が出来ていない研究成果があるため、本年度は光物性の評価を進めていく予定である。
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