研究課題
ピロールを基軸とするこれまでの合成化学的な知見に基づき、以下の成果を挙げることができた。(1)「曲面構造」を有する含窒素ナノカーボンとして、ナフタレンとアセナフチレン縮環ピロールからなる分子の合成に成功した。当初期待したキラルツイスト構造としての単離精製には至らなかったが、ジカチオン種における弱い芳香族性などを明らかにした。(2)HPHACはジカチオン種において外周部の環状共役に基づくグローバル芳香族性を示す事が明らかとなっている。そこでHPHACの外周部に硫黄原子を組み込んだ類縁体を合成した。硫黄原子上の非共有電子対が環状共役に組み込まれ、中性状態でのグローバル芳香族性の発現が期待されたが、そのような挙動は確認できなかった。一方、酸化種(ジカチオン)において、複雑な環状共役の形成がNMRや単結晶構造解析、DFT計算の結果から明らかとなった。(3)直接もしくはベンゼンで架橋したHPHAC二量体を合成した。合成した二量体はいずれもほぼ直交したコンフォメーションを有し、各々のHPHAC部位は独立して酸化還元特性を示すことを明らかにした。ジカチオン種のESR測定から、各HPHAC上のスピン間相互作用を確認した。
2: おおむね順調に進展している
新規物性発現の解明には至っていないが、順調に複数の標的化合物の合成を達成し、その物性評価を行うことができているため。
「曲面構造」を有する含窒素ナノカーボンに関して、合成に成功し、中性種の単結晶構造解析にも成功しているものの、酸化種の電子状態の解明にまで至っていないために論文報告できていない研究成果がある。次年度はその基礎物性評価に力を入れる予定である。同様に、「キラリティー」を有する含窒素ナノカーボンの構築についても、静的な吸収・発光スペクトル測定までは終えているので、引き続き偏光学特性の評価を進めていく予定である。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
J. Porphyrins Phthalocyanines
巻: 27 ページ: 253-259
10.1142/S1088424622500869
巻: 27 ページ: 274-284
10.1142/S1088424622500900
巻: 27 ページ: 1382-1393
10.1142/S1088424623500980