研究課題/領域番号 |
20H02728
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
村中 厚哉 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (20374902)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | フタロシアニン / らせん / 円偏光発光 |
研究実績の概要 |
3次元らせん構造をもつフタロシアニン系化合物および関連するπ電子系化合物に関して種々研究をおこなった。
1)新規誘導体の合成・金属錯体の合成:これまでに開発していたらせん化合物の末端のピリジン環ユニットをベンゼン環ユニットに置き換えた化合物を合成し、その分子構造、電子構造、光学特性をキャラクタライズした。単結晶X線構造解析と核磁気共鳴(NMR)スペクトル解析から、合成した化合物の無金属体は固体状態でも溶液中でもらせん構造をとることを明らかにした。このベンゼン環ユニットに置き換えた誘導体に対して酢酸亜鉛を反応させたところ、配位子と金属イオンが2:2で構成される金属二核錯体が得られた。無金属体から金属二核錯体になることで分子構造と光学特性がどのように変化するのかについて実験と量子化学計算の両方から解析した。
2)円偏光発光(CPL) 特性の向上: これまでに合成したらせん構造をもつフタロシアニン系化合物のフレキシブルな骨格を活用して、CPL分光法によるキラル認識をおこなった。らせん状化合物の亜鉛錯体をホスト分子とし、低分子アミン、アルコール、アミノアルコールをゲスト分子とすることで CPL 分光法によってキラリティーを認識できることを見出した。一般的な低分子系有機化合物ではCPLシグナルの異方性因子の大きさは円二色性(CD)シグナルの異方性因子の大きさに比べて小さくなる場合が多いが、ゲスト分子存在下の亜鉛錯体のCPL 異方性因子は CDの異方性因子よりも大きかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
複数のらせん構造をもつ新規誘導体とそれらの金属錯体を合成することができたものの、一部のらせん化合物群の精製条件の検討を行うために実施期間延長をしたため。
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今後の研究の推進方策 |
1)新規誘導体の合成・金属錯体の合成:これまでの研究から複数のタイプの長いらせん構造をもつフタロシアニン系化合物を合成できることが確認されたが、一部の化合物は精製単離が困難であった。そこで、生成が確認されたもののまだ単離できていない化合物およびその金属錯体に対して反応条件・精製条件を検討して単離を行い、物性を評価する。
2)物性評価:これまでに合成することができたらせん構造をもつフタロシアニン系化合物に対してキロプティカル特性をさらに調査すると同時に半導体特性など他の物性についても評価を行う。分子構造と各種物性の相関関係を調査する。
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