3次元らせん構造をもつフタロシアニン系化合物および関連するπ電子系化合物に関して種々研究をおこなった。
1)らせん構造の末端ピリジンユニットにキラルな置換基を導入した化合物において、その右巻き・左巻きのらせん構造の割合が溶媒によって容易に変化し、キロプティカル特性をスイッチ可能であることを見出した。R の絶対配置をもつ 1-ジクロロフルオロフェニルエトキシ基が連結したらせん化合物は、亜鉛錯体では溶媒の種類にかかわらず右巻きらせん構造の存在割合が多くなるが、無金属体ではトルエンやエタノールなどの溶液中では右巻きらせん構造の存在が多くなり、クロロホルムやテトラヒドロフランなどの溶媒中では右巻き構造と左巻き構造が同程度存在することが円二色性(CD)スペクトルの解析から判明した。
2)末端ピリジンユニットをキノリンユニットに置き換えたイソインドリンユニット:ピリジンユニット:キノリンユニット=2:1:2 で構成されるπ骨格が拡張されたらせん化合物とらせん構造の中心のピリジンユニットをベンゼンユニットに置き換えたイソインドリンユニット:ベンゼンユニット:ピリジンユニット=2:1:2 のらせん化合物を合成し、分子構造、電子構造、光学特性をキャラクタライズした。どちらの化合物もこれまで開発した化合物と同様に溶液中フレキシブルならせん構造をとることが明らかとなった。ベンゼンユニットをもつらせん化合物の亜鉛錯体はこれまでのフタロシアニン系らせん化合物よりも少ない量のキラルゲストによってキラル認識することが可能になった。
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