研究課題/領域番号 |
20H02729
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 洋平 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (60609816)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | カルボン酸 / ラジカル / 光 / 一電子移動 / ホウ素 |
研究実績の概要 |
前年度までに見出していた、ホウ素触媒と光励起を組み合わせたカルボン酸のα位アリル化反応の不斉反応への展開を検討した。ラセミ反応で良好な反応性を示したピレン型の配位子について、不斉補助基を利用した光学分割を行い、光学活性な配位子を得た。この配位子を用いてα位アリル化反応を実施したが、予想に反して生成物はラセミ体であった。BINOL型の配位子を用いると中程度のエナンチオ選択性を発現するが、収率も中程度にとどまった。収率とエナンチオ選択性の両立は非常に困難であると判断し、ラセミ反応として取りまとめることとした。様々なαアリールカルボン酸を基質に用いることが出来、4級炭素の構築も円滑に進行した。また、エステル存在下においてもカルボン酸選択的に反応が進行するという、ホウ素触媒に特有の化学選択性も確認することが出来た。導入するアリル基についても、2位にさまざまなアリール置換基が許容された。一方で、2位にアルキル基が置換したアリル化剤は反応性が極端に低下した。 反応機構に関する知見を得るために、ラジカルクロック実験や競合反応実験などの種々のコントロール実験を行った結果、可視光照射がトリガーとなるラジカル反応であることが支持された。また、光のON・OFF実験と量子収率の測定結果から、少なくともラジカル連鎖が主たる反応経路ではないということが分かった。一方で、紫外可視吸収スペクトルの測定によって、可視光を吸収して励起している化学種を特定しようと試みたが、反応系中で発生しているホウ素エノラートの存在量が低すぎるために、決定的なデータを得ることはできなかった。以上の結果をまとめ、論文を投稿し受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反応機構に関する知見とともにアリル化反応を論文として取りまとめることが出来た。また、不斉反応へと展開するためには、新たな配位子デザインが必要であることが明らかとなり、明確な課題として認識できた。
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今後の研究の推進方策 |
アリル化反応の不斉化を目指し、BINOL骨格を軸に置換基検討を行うとともに、アミノ酸型配位子などの他の骨格を持つ配位子についても検討を行う。 また、2020年度に見出しているカルボン酸のα位アミノ化反応の条件検討を進め、最適条件を突き止め、適用範囲についても検討する。
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