前年度までに見出していたホウ素触媒と可視光励起を組み合わせたカルボン酸のα位アミノ化反応の最適化を検討した。本反応は、昨年度取りまとめたα位アリル化反応と同様に、光励起したカルボン酸ホウ素エノラートからアミノ化剤への1電子移動を起点として、ラジカル機構でC-N結合が形成されると想定した。実際にホウ素触媒と塩基が必須であり、暗所では反応が進行しないという、α位アリル化と同様の挙動を示した。一方で、アリル化反応で最適であったピレン型配位子は、アミノ化反応には有効ではなくBINOL型の配位子が良好な反応性を示した。ホウ素上の配位子が励起エノラートの1電子供与能を調節して反応剤の電子受容能と適合した際に良好な反応性を示すのではないかと考えられる。 アミノ化剤の脱離基についても精査したところ、2-ナフチルスルホニル構造が最適であった。1電子受容能を高めるため、電子求引基の導入なども検討したが、収率の向上は見られず、電子的要因のみならず立体的要因も収率の決定要因であることが分かった。 光源、温度、濃度、当量関係などを詳細に検討し最適反応条件を決定した。この反応条件を用いて様々なカルボン酸を基質とした適用範囲の検討を行った。種々のアリール基をα位に有するカルボン酸が適用可能であり、さまざまなα、α二置換グリシン誘導体が合成可能であった。ケトン部位が共存する基質であってもカルボン酸選択的にアミノ化が進行する。また、アミノ化剤の窒素上置換基についてもBoc基およびCbz基が許容である。
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