我々はこれまでに,配位子周辺部の修飾により触媒反応点から離れた遠隔位をかさ高くした配位子の開発に関する研究を進めてきた。本研究では,遠隔位がかさ高いカルボキシラト配位子の遷移金属錯体触媒反応における立体効果の検証を目的として研究を進めた。パラジウムを用いる分子間炭素―水素結合アリール化反応においては,適切なかさ高さを有するカルボキシラト配位子を用いると温和な条件で目的反応が進行した。カルボキシラト配位子をもつ複核ロジウム錯体を用いたカルベン挿入反応においては,周辺部がかさ高い配位子をもつ触媒では,通常のカルボキシラト配位子をもつ触媒と比較して,反応の化学選択性が異なることが分かった。
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