研究実績の概要 |
1. [3]CPPCの大量合成を可能にする不斉シクロプロパン化(環化三量化)反応の開発 筆者は、自らが開発したトリアゾールを金属カルベン種の前駆体として利用する反応を用いて、「C3対称性」を持つ光学活性シクロファン([3]cycloparaphenylenecyclopropyrene:[3]CPPC)を完全なエナンチオ選択性で不斉合成できることを報告している(ACIE 2017, 56, 3334)。本反応では、求電子性部位と求核性部位を持つトリアゾールを用いて、分子間反応を二度経たのち、分子内反応によって、三つのシクロプロパン環を一挙に構築しています。さて、[3]CPPCを基本骨格とする機能性材料を開発するためには、まず[3]CPPCそのものを高収率で合成することが肝要であります。これまでフェニレンからなる[3]CPPCは収率33%(99.9% ee, dr. >20:1)と、必ずしも満足のいく収率で合成することができませんでした。これは不斉シクロプロパン化反応における立体選択性が低いことが原因だと考えられます。そこで本研究では、収率の向上を目指し、市販品および新規の不斉配位子を合成・検討したが、これまでのところ上記の結果を上回る収率を達成できなかった。 2. 様々なスペーサー部位を持つ光学活性シクロファンのライブラリー構築 本研究では、トリアゾールを反応剤とする合成手法を用いた上記の環化3量化反応を鍵に、チオフェン環をシクロプロパンで挟んだC3対称性を持つ環状[3]チエニレンシクロプロピレン(チオフェン環そのものの非対称性、すなわち硫黄原子の位置の違いにより不斉誘起された新規螺旋型化合物)を不斉合成しました。様々な組み合わせ(チオフェン環のx位にトリアゾール基、y位にビニル基を有する基質)を試みたところ置換様式によって環化3量化や環化2量化反応が進行することを見出しました。
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