研究実績の概要 |
本研究ではスピン多重度の異なるポテンシャルエネルギー表面間での遷移=系間交差を利用した反応の促進,ならびに,基質分子間および配位子との間に生じるLondon分散力を活用することで,合成化学的な魅力に富む高選択的鉄触媒クロスカップリング反応を開発する。・不斉クロスカップ リング反応,・ジアステレオ選択的クロスカップリング反応などを開発し,これらに対する・反応機構研究に基づく量子効果の検証を行い,反応経路に対する系 間交差と分散力の影響を理論的に明らかにする。これまでに,種々の配位子の合成とカップリング反応への応用から研究 を行って来た。モデル系に対する大規模DFT計算と反応経路解析を並行し,スピン状態毎の全反応経路のポテンシャルエネルギー表面(PES)を求めることで反応 機構の解明をおこない,報告した。(Sharma, et al., Molecules 2020,25,3612). 実験では,同不斉配位子による有機亜鉛化合物のアザビシクロアルケンへの付 加反応の検討を進め,エナンチオおよびジアステレオ選択的なカルボメタル化反応の開発に成功した。同反応の反応活性種体の溶液構造を放射光XAS法で求め,計 算結果と照らし合わせることで,本反応系ではクロスカップリング反応系と異なり鉄触媒の酸化還元は起こらずFe(II)中間体を嗅ぎ反応活性主として進むことが 明らかとなった。この結果は速報として発表した。(Adak et al., Chem. Commun., 2021, 57, 6975-6978)大規模DFT計算を行い,反応機構における量子効果の影響を考察した。独自に設計した配位子SciPROPを用いた,新規の位置選択的鈴木ー宮浦カップリング反応の開発に成功した。本反応における量子効果についても今後検証を進める。
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