研究課題
単環のベンゼン誘導体から多環芳香族炭化水素(PAH)まで,芳香族骨格を有する生理活性物質や機能性材料は多い。これらの材料開発を迅速に進めるには,多置換芳香族化合物を位置選択的に自在に合成する手法の開発が必須である。ジアゾキノンは,活性化基となるジアゾ基を内在する芳香族ユニットであり,これを用いれば,置換芳香族化合物を自在に合成できるようになると期待される。特にこれまで合成が難しかった多置換フェノールや,医薬品,新型π系化合物などの 機能性物質の合成法を短工程で提供できるようになる。本研究は,1)ジアゾキノンの簡便な合成法の開発,2) 多置換芳香族化合物や材料を指向したジアゾキノンの反応開発,3) 開発した反応を用いる有用機能性物質の合成,を目的とし,ジアゾキノンを中心とする新しい芳香族合成化学を確立しようとするものである。 本年度は,ジアゾキノンの反応開発として,金属触媒を用いて種々の求核剤との反応を行った。求核剤として,電子求引性基をもったアルコールであるエポキシアルコールを反応させるとベンゾジオキサン化合物が得られることが分かった。この反応の反応機構は,まず,ジアゾキノンと金属触媒との反応により生じた金属カルベンに,アルコールがOH挿入し,続いて,生じたフェノール部位がエポキシアルコール由来のエポキシド部位と反応してジオキサン化合物が生じていると考えている。また,求核剤として二硫化炭素を用いると,環状チオ炭酸エステルや,スピロオルトジチオ炭酸エステルが得られることを見出した。さらに,金属触媒を用いたジアゾキノンとケテンシリルエーテルの反応により,オルト-ホモアシルフェノール誘導体が得られる知見を利用して,天然物イソキノサイクリンの形式合成を行うことができた。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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