研究課題
本課題は、金属錯体系イオン液体の広範な物質開発を進め、外場による液体物性制御の実現につなげることを目的とする。本年度は、外場応答性を有する各種の金属錯体系イオン液体の開発を継続し、特にその応答性評価・機能開拓に重点を置いた。第一に、ルテニウム錯体含有光反応性イオン液体の化学修飾と機能性開拓を進めた。ここでは置換基末端にジメチルアミノ基を有する錯体を用いたイオン液体を開発した。置換基の立体障害のため、この液体は光反応性に乏しかったが、シアノアルキル基を有するイオン液体を混合すると光反応を起こし、混合比に応じた反応率制御が実現した。これらの液体における光・熱によるイオン伝導度の可逆変化を検証した。第二に、化学反応に基づく刺激応答性液体の開発を目的として、二座共役配位子を有するルテニウム錯体をカチオンとするイオン液体を合成した。液体の色・物性・反応性は、錯体の補助配位子(CO、MeCN、SMe2、またはDMSO)に応じて異なり、CO錯体からなる液体は黄色、他は橙色~赤褐色だった。また、これらの液体は配位子交換によって相互変換を起こした。CO以外の配位子の間の交換反応は、過剰な配位子存在下での加熱で起こった。一方、COから他の配位子への交換は、配位子存在下でのUV光照射によって生じた。第三に、より基礎的な系として、二重結合を持つオニウム塩を対象として、臭素付加による物性転換の実証を試みた。ビニル基を有するビススルホニルアミドをアニオンとするイオン液体は、臭素との反応で混合物を生じ、臭素付加体、その三臭化物塩、およびアニオン由来の環状付加体が生成した。一方、二重結合を持つオニウムカチオンからなる塩は、同じ反応で臭素付加体を定量的に生じた。この反応を通じ、イオン液体、柔粘性イオン結晶、および通常のイオン結晶の間での化学的相変換が実現した。
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
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