研究課題/領域番号 |
20H02758
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
竹本 真 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (20347511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | カーバイド / クラスター / ニトロゲナーゼ / Fischer-Tropsch / 鉄硫黄クラスター / ルテニウム / カルベン |
研究実績の概要 |
本研究では、代表者が開拓してきたC1配位子を有する二核ルテニウム錯体の化学を基盤として、触媒活性種のモデルとなる配位不飽和なカーバイドクラスターを創成する。そのために、(1) 新規なルテニウムカーバイドクラスターの合成、(2) カーバイド配位子を炭素源とする炭素鎖生成反応、(3) 硫黄配位子・硫黄クラスターの導入による FeMo-co モデルの開発、の3テーマを並行して推進している。(1) 新規なルテニウムカーバイドクラスターの合成に関しては、コンパクトな無置換シクロペンタジエニル配位子を支持配位子とすることで2分子の二核ルテニウムカーバイド錯体を金属上に集積化できることを見出した。嵩高いシクロペンタジエニル配位子を活用することで、ヒドリドおよびスルフィド配位子を有する配位不飽和な二核ルテニウムメチレン錯体を合成した。(2) カーバイド配位子を炭素源とする炭素鎖生成反応の開発に関しては、二核ルテニウムカーバイド錯体へのメチレン配位子の逐次付加による直鎖状炭素鎖生成反応を開発するに至った。また昨年度までに合成していた2分子の二核ルテニウムメチリジン錯体が2つのパラジウム原子を挟んだサンドイッチ構造をもつRu4Pd2異種六核メチリジンクラスター上でのメチリジン配位子とアルキニル配位子との選択的結合形成反応も見出した。(3) 硫黄配位子・硫黄クラスターの導入による FeMo-co モデルの開発に関しては、二核ルテニウムメチレン錯体への硫黄配位子の導入により、キュバン型構造の1つの頂点に炭素配位子を有する四核ルテニウムクラスターが得られることを見出すとともに、その動的な溶液構造および電気化学的特性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、代表者が開拓してきたC1配位子を有する二核ルテニウム錯体の化学を基盤として、触媒活性種のモデルとなる配位不飽和なカーバイドクラスターを創成する。そのために、(1) 新規なルテニウムカーバイドクラスターの合成、(2) カーバイド配位子を炭素源とする炭素鎖生成反応、(3) 硫黄配位子・硫黄クラスターの導入による FeMo-co モデルの開発、の3テーマを並行して推進している。 研究実績の概要で述べたように、これら3つのテーマのそれぞれについて研究目的に適った興味深い成果が得られた。そのため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、(1) 新規な遷移金属カーバイドクラスターの合成、(2) カーバイド配位子を炭素源とする炭素鎖生成反応、(3) 硫黄配位子・硫黄クラスターの導入による FeMo-co モデルの開発、の3つのテーマを並行して推進する。 (1) 新規な遷移金属カーバイドクラスターの合成に関しては、昨年度までに合成した嵩高いシクロペンタジエニル配位子を有する二核ルテニウムメチレン錯体をカーバイド錯体へと誘導し、その構造および反応性を明らかにする。さらに、同様の手法でルテニウムと同族の鉄についても研究対象を拡張する。 (2) カーバイド配位子を炭素源とする炭素鎖生成反応の開発に関しては、昨年度までに見出したサンドイッチ型Ru4Pd2異種六核メチリジンクラスター上での、C2+C1結合生成反応に関する知見をもとに、メチレン(CH2)、メチリジン(CH)、カーバイド(C)などの多様な炭素ユニットの連結反応へと展開する。さらにジフルオロメチレン(CF2)をC1ユニットとして用いることでフッ素を含む有機金属フルオロカーボンクラスターを創出する。 (3) FeMo-co モデルの開発に関しては、その生合成機構とも関連した Fe4S4キュバン型鉄硫黄クラスターへのC1配位子の導入方法を開拓する。これまでに合成鉄硫黄クラスターへのメチレン配位子の導入例はなく、ニトロゲナーゼモデルの合成に向けたブレークスルーとなる可能性を秘めている。ルテニウムカーバイド錯体と鉄硫黄クラスターを複合化させた新規クラスターの合成にも展開する予定である。
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