研究実績の概要 |
本年度は以下の(a),(b)を実施した。 (a)三角形型発光性安定有機ラジカルの創出: ピリジル基を有する三角形型ラジカルtrisPyMを開発した。trisPyMは溶液中のみならず低温で結晶状態でも発光を示す極めて珍しいラジカルであることを明らかにした。trisPyMはこれまで合成されてきたピリジル含有発光ラジカルに比べ早い内部転換を示し、これが核モーメントに基づくことを理論的に示した。trisPyMは既報の発光ラジカルに比べ高い光安定性を示した。 (b)trisPyMと亜鉛イオンからなるハニカム格子結晶の創出: trisPyMとZn(hfac)2との錯形成反応により二次元ハニカム格子構造を有する開殻配位高分子trisZnを創製した。trisZnは低温で固体発光を示す極めて珍しい物質であることを明らかにした。 (c)磁場応答発光を示す新しいラジカル亜鉛錯体の開発:発光ラジカルPyBTMをドープした亜鉛錯体がドープ量や磁場に依存した発光挙動を示すことを明らかにした。ドープ量が低い(1wt%)試料では、固体中にて孤立しているラジカル配位亜鉛錯体からの発光が観測され、この発光は磁場に応答しなかった。一方、ドープ量が5, 10, 20wt%である試料は、モノマー的な発光帯に加えエキシマ―に帰属される発光帯を示し、さらに発光挙動が磁場に依存する(=magnetoluminescence)ことを見出した。これらの結果は、本研究で開発する分子材料が、スピンと発光が相関した特異物性を生み出す候補物質であることを示している。
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