本研究では、①分析性能の高い紙デバイスの研究、②免疫分析デバイスの開発、③細胞アッセイ及び細胞分離デバイスの開発、④教育ツール用デバイスの開発に取り組むことを目的とした。研究最終年度の本年度は、昨年度に引き続き、①、②、④の開発を進めるとともに③に取り組んだ。 ①土壌分析を例にして、リンおよび窒素(硝酸態窒素)が検出可能な紙デバイスを開発した。また、リン、窒素、カリウム(昨年開発済み)の同時分析が可能な紙デバイスを開発した。同時分析用の紙デバイスの問題点を抽出し、同時研究デバイスの設計指針を得た。 ②酵素免疫分析(ELISA)が可能な新しい紙デバイスを開発した。魚卵アレルゲンをモデルにして、デバイスの性能評価を行い、その有用性を確認した。 ③細胞アッセイ用の紙デバイスを開発した。ルシフェラーゼ発現大腸菌をゲルを利用して紙上に固定化し、発現誘導・生物発光を観測することに成功した。これにより紙デバイスを利用したレポーターアッセイの基盤を構築した。 ④リモートラーニング用の紙デバイス分析システムを開発した。使い捨てのプラスチックスポイト使用して市販の飲料のアスコルビン酸濃度とpH値を同時測定し、デジタルカメラで画像取得・画像解析を行い、濃度およびpH値を測定した。得られた結果は従来の測定キットとプレートリーダーを用いた方法で得られた結果とよく一致することを確認した。このシステムは、リモート学習環境で特定の物質の化学分析を行うための新しい教育ツールとして使用できると考えられる。
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