研究実績の概要 |
A型インフルエンザウイルスRNAプロモーター領域及びリボソームRNA A-siteは、阻害剤開発の重要なターゲットとなっている。本研究では、ペプチド核酸(PNA)による三重鎖核酸形成に着目することで、RNA結合タンパクに匹敵する結合力と結合選択性、さらには深赤色蛍光検出機能を併せ持つRNA結合リガンドを開発、阻害剤開発支援のための蛍光インジケーターとしての有用性を実証する。さらに、阻害剤そのものとしての機能を評価するとともに、ウイルスRNA検出プローブとしての活用法を提案・実証する。 本研究で提案するプローブ設計の最大の独自性は、「ループ部位結合」と「三重鎖核酸形成」を併用することにあり、実際、これにより単なる三重鎖核酸形成PNAでは達成し得ない優れた機能が発現することを見出した。令和4年度の研究実績の概要は下記のようになる。 (a) A型インフルエンザウイルスRNAプロモーター領域に対しては、キナゾリン-2,4-ジアミン誘導体をループ部位結合分子として活用することで、世界最強レベルの結合力を有する結合リガンド(三重鎖核酸形成PNA)の開発に成功し(特願2020-129884)、これをA型インフルエンザウイルスRNA検出に適用できることを実証した(Anal. Chem. 2022, 94, 7814)。本年度は、結合反応の速度論的解析を行うことで、「ループ部位結合」が結合反応の律速段階であり、効果的な「三重鎖核酸形成」を促進するアンカーとして機能していることを明らかにした(Org. Biomol. Chem. 2023, DOI: 10.1039/d3ob00262d)。 (b) 本研究課題に関連して、リボソームRNAを豊富に含む核小体イメージング蛍光色素を報告した(Analyst 2023, 148, 636; ACS Omega 2023, 8, 9592)。
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