研究課題/領域番号 |
20H02762
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
佐藤 記一 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (50321906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイオアッセイ / 腎臓 / マイクロ流体デバイス / マイクロ臓器モデル |
研究実績の概要 |
腎疾患の発症機構の解明や治療法・治療薬の探索には、腎疾患の過程を詳細に解析可能な分析法が必要であるが、腎排泄の機能をもつ生体外腎モデルや、その各種疾患モデルは開発されておらず、動物実験に頼る部分が多かった。そこで、本研究ではマイクロ流体デバイス内にヒトの腎臓由来の細胞を2次元および3次元共培養することで、糸球体モデルと尿細管モデルを開発することをめざした。 本年度は昨年度に引き続き、デバイスを作製し、その内部での細胞培養条件の最適化を試みた。糸球体については健常ヒトポドサイト細胞株および健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を、尿細管についてはヒト腎近位尿細管細胞と健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を試みた。培地組成、培地流速、培養温度、血管側流路への印加圧力、メンブレンフィルターのコーティング条件、ハイドロゲルの種類や組成などを検討し、培養条件の最適化を試みた。 各デバイス内で培養した細胞について、免疫染色を含めた細胞形態の顕微観察により、各細胞の状態の解析を試み、内皮細胞による毛細血管網、尿細管の管状構造、ポドサイトの細胞骨格の変化などについて解析し、その結果いずれの細胞もおおむね良好に培養できていることを確認した。 また、低分子化合物およびタンパク質を血管側流路に添加し、尿細管側流路に漏出してきた量をはかることにより透過率を算出した。試料として蛍光物質や蛍光標識タンパク質を用いることで、流路内での定量を試み、流路のサイズや各流路での溶液の流速を検討することにより、より実際の腎臓に近い透過率が得られるようにシステムの最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトの腎臓由来の細胞をマイクロ流体デバイス内に2次元および3次元共培養することで、糸球体モデルと尿細管モデルを構築することを目指したが、各モデルについて細胞を良好に培養することができた。また、透過性試験においては実際に透過係数を算出することができ、おおむね目的を達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き、デバイス内で細胞培養条件のさらなる最適化を試みる。糸球体については健常ヒトポドサイト細胞株および健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を、尿細管についてはヒト腎近位尿細管細胞と健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を試みる。培地組成、培地流速、培養温度、血管側流路への印加圧力、メンブレンフィルターのコーティング条件、ハイドロゲルの種類や組成などを検討し、培養条件の最適化を試みる。構築した各正常モデルについて画像解析と透過性試験を行うことで、その性能を評価する。 さらに、この正常モデルに糸球体の透過性を亢進させ、ネフローゼ症候群の原因となることが知られているlipopolysaccharide (LPS) やvascular endothelial growth factor (VEGF) などの化合物や、尿細管細胞に損傷を与えることが知られているシスプラチンなどの抗がん剤や抗生物質などを血管側流路に添加することにより腎疾患モデルを構築し、実際にタンパク質透過性が亢進されるか定量的に評価する。
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