腎疾患の発症機構の解明や治療法・治療薬の探索には、腎疾患の過程を詳細に解析可能な分析法が必要であるが、腎排泄の機能をもつ生体外腎モデルや、その各種疾患モデルは開発されておらず、動物実験に頼る部分が多かった。そこで、本研究ではマイクロ流体デバイス内にヒトの腎臓由来の細胞を2次元および3次元共培養することで、糸球体モデルと尿細管モデルを開発することをめざした。 本年度は昨年度までに引き続き、デバイスを作製し、その内部での細胞培養条件の最適化を試みた。糸球体については健常ヒトポドサイト細胞株および健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を、尿細管についてはヒト腎近位尿細管細胞と健常ヒト糸球体内皮細胞株の共培養を試みた。培地組成、培地流速、培養温度、血管側流路への印加圧力、メンブレンフィルターのコーティング条件、ハイドロゲルの種類や組成などを検討し、培養条件の最適化を試みた。また、2次元糸球体モデルについては培地流による剪断応力を印加した状態でのモデル構築を検討した。また、得られた正常モデルに対して、lipopolysaccharideやPuromycin Aminonucleosideを作用させることにより、疾患モデルの構築を行った。 構築したモデルについて、低分子化合物およびタンパク質を血管側流路に添加し、尿細管側流路に漏出してきた量をはかることにより透過率を算出した。試料として蛍光物質や蛍光標識タンパク質を用いることで、流路内での定量を試み、流路のサイズや各流路での溶液の流速を検討することにより、より実際の腎臓に近い透過率が得られるようにシステムの最適化を行い、さらに正常モデルと疾患モデルの差異について検討した。
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