昨年度に引き続き、ラベルフリーディファレンシャル解析の迅速化を目的とした「6サンプル並列同時分析のための周波数分割多重化LC-MS/MS」の開発を進めた。6並列導入に関しては、定量性を担保に関する検討を行った。6系統導入時の再現性について検討を行ったところ、n = 5の測定において各試料導入口からの導入された信号強度にてついてはある程度の再現性を得ることができた。しかしながら、同一濃度の資料を導入しているにもかかわらず、6系統の絶対信号強度については大きなばらつきがあった。これは、各エレクトロスプレーでのイオン化効率と試料導入口への導入効率が、各系統で異なっていると考えられる。これらの要因を精密調整することで再現性の向上を図ることは不可能ではないと考えられるが、測定の利便性を考えて内部標準物質を利用した定量性の担保について検討を行った。その結果、適切な内部標準物質を用いと、六系統から異なる濃度の試料を導入し、得られた相対信号強度を用いて検量線を作成したところ、6形動同時分析にもかかわらず相関係数0.996と極めて高い定量性を得ることに成功した。MS/MS測定モードについては、従来のインターフェイスでは試料干渉が生じることがあったが、インターフェイス内での試料の流れを考慮してインターフェイス形状の改善を行ったところ、干渉のないデータを得ることに成功した。また、ウシ血清アルブミンのトリプシン分解物をMS測定とフラグメント化・MS測定を交互に行うモード(交互測定モード)で測定を行い、フーリエ変換に基づく信号処理を行ったところ、信号強度・マススペクトルについて問題なく復元を行うことに成功した。更に交互測定モードの信号処理の迅速化のため、mzXML形式のデータからの信号処理についても検討を行った。
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