研究課題
当該年度には、前年度までの成果を引き継ぎ、申請書に記載の研究計画に基づいて、我々が提案する逐次測定可能な高速円二色性スペクトルメータの原理実証や、測定波長の紫外・深紫外領域への拡張、および測定精度の改善等に取り組んだ。特に、測定波長の短波長化においては、紫外領域で高透過率・高屈折率の材料を用いて偏光素子を作製するプロセスの開発に注力し、有効波長域を大幅に拡大することができた。更に測定精度を向上させるためのノイズレベルの抑制に関しても大きな進歩を得ることができた。これらの結果に基づいて、当該高速CDスペクトルメータの基本特許の出願に至った。これと同時に、構築したCDスペクトルメータの動作を検証し、且つ高速測定によって物性変化の解明につながるキラル物質の開発を行った。具体的には、光異性化部位を有するキラル分子と、熱相転移型のキラル分子を実現した。いずれも、比較的な大きな円二色性を紫外-可視領域で発現するため、前述のCDスペクトルメータの開発フェイズにマッチしていると考えられる。更に、関連する機能性ペプチドや発光分子等の材料開発も実施した。また、前年度に引き続き、これらの光計測技術が確立した際に、その高速性を生かして、微量の被測定物を搬送しながら分析するためのマイクロ流路デバイスの作製技術の研究にも取り組んだ。加えて、同じく前年度に引き続いて、より高機能な偏光素子の実現に取り組み、分光と偏光を同時に検出する技術も実証することができた。以上の様に、当該年度は、光学異方性媒質を効果的に分析する技術の確立に向けて、偏光素子・測定装置・材料・関連デバイスの研究に取り組み、大きな進展を得ることができた。
2: おおむね順調に進展している
現在までに、「研究実績の概要」に記載の通り、広範にわたって大きな進展が得られてはいるものの、紫外および深紫外領域での測定精度の向上が必要となっており、結果として、開発されたキラル物質の円二色性とその時間変化を高速に測定するには、性能がやや不十分となっている。一方で、測定対象となるキラル物質や関連材料の研究及び偏光機能性素子の開発等は、順調に進展しており、総合的には、「おおむね順調に進展している」と思われる。
今後の研究計画として、まず前年度に引き続き、紫外・深紫外領域の測定精度の向上を目指す。これには、前年度に実施した、高屈折率材料の微細加工プロセスを更に追求し、偏光素子の高効率化を実現する。同時に、光学系の改良を行い、短波長領域に対応した高精度且つ高速のCDスペクトルメータの実現を目指す。これを用いて、前年度開発した、光異性化部位を有するキラル分子と、熱相転移型のキラル分子の円二色性とその時間変化を測定し、その物性変化の解明につなげることを計画している。また、引き続き、関連する機能性材料の開発や、周辺技術となるマイクロ流路デバイスや機能性偏光素子の開発にも、継続して取り組むことを計画している。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (2件) 産業財産権 (3件)
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