研究課題/領域番号 |
20H02772
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
早下 隆士 上智大学, 理工学部, 教授 (70183564)
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研究分担者 |
神澤 信行 上智大学, 理工学部, 教授 (40286761)
橋本 剛 上智大学, 理工学部, 教授 (20333049)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 細菌識別 / 超分子ナノ構造体 / デンドリマー / フェニルボロン酸 / ジピコリルアミン / 蛍光観察 |
研究実績の概要 |
我々はこれまでに、蛍光シリカナノ粒子とジピコリルアミン金属錯体の複合体が、黄色ブドウ球菌などの細菌と凝集体を形成し、目視で細菌 を検出できる事を見いだして いる。またポリアミドアミンデンドリマー(樹木状高分子)の表面にフェニルボロン酸を導入したナノ構造体では 、黄色ブドウ球菌と大腸菌とを識別して黄色ブドウ球菌のみを選択的に凝集させることに成功した。本研究では、様々な分子認識部位を導入し た超分子ナノ構造体を開発し、その細菌に対する選択的識別メカニズムを明らかにするとともに、細菌種を簡易・迅速に識別できる新しい検出 ・捕集技術を開発し、研究期間内の実用化を目的とする。2020年度は、1)蛍光型分子認識プローブの開発および超分子ナノ構造体の蛍光・凝集応答機能および細菌識別機能の評価、および2)細菌と超分子ナノ構造体との相互作用観察及び細菌の定量評価技術の開発を行った。 1)については、第四世代PAMAMデンドリマーの表面にフェニルボロン酸とナフチルボロン酸(B-Nap)、更にはカチオン性部位としてベタイン(Bt)を導入し、B-PAMAMに加え新たにBt-B-PAMAM、B-Nap-PAMAM、Bt-B-Nap-PAMAMを合成した。 カチオン性のベタインを導入することで、高pH 条件においても細菌凝集が起こることを、蛍光顕微鏡観察および濁度測定により明らかにした。また疎水性の高いB-Nap-PAMAM、Bt-B-Nap-PAMAMでは、大腸菌にも凝集能を示すことがわかった。 2)について、蛍光による測定を行ったところ、Bt-B-Nap-PAMAMでは、著しい蛍光消光が起こることがわかった。一方B-Nap-PAMAMでは、中性pH条件においてグラム陽性菌である黄色ブドウ球菌選択的に蛍光応答が見られ、pH 10.5の高pH条件では、グラム陰性菌である大腸菌に選択的な蛍光応答が起こることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度に引き続き2021年度は、最初の課題である1)蛍光型分子認識プローブの開発および超分子ナノ構造体の蛍光・凝集応答機能および細菌識別機能の評価、および2)細菌と超分子ナノ構造体との相互作用観察及び細菌の定量評価技術の開発を中心に研究を進めた。糖鎖を認識するフェニルボロン酸に加え、デンドリマー界面の表面電荷を調整できるベタインを第4世代PAMAMデンドリマーの表面に化学修飾したBt-B-PAMAMを合成し、また蛍光応答が期待できるナフチルボロン酸(B-Nap)を導入したB-Nap-PAMAM、Bt-B-Nap-PAMAMを新たに合成した。細菌との応答を調べた結果、カチオン性のベタインを導入することで、高pH 条件においても細菌凝集が起こることを明らかにした。またB-Nap-PAMAMにおいては、中性条件でグラム陽性菌に、高pH条件ではグラム陰性菌に対し、蛍光増強を伴う蛍光応答が起こることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、1)蛍光型分子認識プローブの開発および超分子ナノ構造体の蛍光・凝集応答機能および細菌識別機能の評価、および2)細菌と超分子ナノ構造体との相互作用観察及び細菌識別のメカニズム解明を中心に研究を進める。1)については、第四世代PAMAMデンドリマーの表面にフェニルボロン酸とジピコリルアミノ基を導入し、DPA-HB-B-PAMAMおよびBenzo-PAMAMを新たに合成し、凝集体の形成挙動と細菌識別機能を蛍光顕微鏡観察および濁度測定により明らかにする。2)については、Benzo-PAMAMがグラム陽性菌に凝集選択性を示す原因の解明のために、抗体法を用いた研究を進める。
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