研究実績の概要 |
本年度は、テトラフェニルエチレンおよび様々な官能基を導入したポリエチレングリコールとポリリジンが連結したブロック共重合体ライブラリを用いて構築した細菌叢メトリクス技術の適用範囲を拡大する試みを実施した。具体的には、大腸菌の異なる株の識別や、腸内細菌叢サンプルに微量にスパイクされた微生物の検出を行った。大腸菌の識別については、ブロック共重合体ライブラリによって得られた蛍光応答パターンを多変量解析法によって解析することで、8種の異なる株(DH5α、JM109, EPI300など)を交差検証により100%の精度で識別することに成功した。また、微生物の検出については、腸内細菌叢サンプルにOD600 = 0.001という希薄な濃度で添加されたBacteroidetes門およびFirmicutes門に属する腸内由来細菌の検出を、交差検証により93%の精度を実現した。これらの成果はChemical Sciences誌にて発表し、プレスリリースのほか、様々な媒体で取り上げられた(S. Tomita et al., Chemical Science, 2022, 13, 5830-5837)。さらに、マウスの運動習慣の良否の検出に本技術の適用を試みた。具体的には、マウスのケージ内に設置された回転輪を一定時間固定し、その間のマウスの運動量を制限した。運動量は腹部に埋め込んだ運動量計測装置によって計測した。回転輪が固定状態と解放状態のマウス由来の腸内細菌叢サンプルをブロック共重合体ライブラリによって評価した結果、運動制限の有無を高い精度で判定できることが見いだされた。
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