研究課題/領域番号 |
20H02780
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
依馬 正 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20263626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / C-H結合 / C-C結合 / アルデヒド / 無溶媒触媒反応 |
研究実績の概要 |
N-メチル-N-(2-ピリジル)ホルムアミド(Cominsホルムアミド)は塩基性の高い有機金属試薬と反応してアルデヒドを与える有用な化合物である。今回、無溶媒で二酸化炭素とヒドロシランとN-メチル-N-(2-ピリジル)アミンからCominsホルムアミドを合成し、そのままワンポットで有機金属試薬を加えてアルデヒドを得た。まず無溶媒で触媒として働くことが確認されているテトラブチルアンモニウムアセテート(TBAA)を試したところ、Cominsホルムアミドの合成収率は63%しかなかった。添加剤をスクリーニングしたところ、酢酸銅(II)を併用した場合に収率が高くなった(83%)。意外なことに、酢酸銅(II)を単独で用いたところ、目的生成物がさらに高い収率(98%)で得られた。最適条件でワンポット・アルデヒド合成を行った。上記の反応混合物へ窒素雰囲気でGrignard試薬を2当量加えたところ、良好な単離収率でアルデヒドが得られた。 さらに、二酸化炭素固定化反応とVilsmeier反応を組み合わせてワンポット・アルデヒド合成を試みた。二酸化炭素とフェニルシランを用いてN-メチルアニリンのN-ホルミル化反応に適した触媒を探索したところ、テトラブチルアンモニウムアセテート(TBAA)と酢酸銅(II)の二成分触媒が優れていた。さらに、その反応混合物を用いてワンポットでVilsmeier反応を行い、種々の芳香族アルデヒドを合成した。 一方、無溶媒・二酸化炭素雰囲気・30℃・フェニルシラン存在下でN-メチルアニリンを反応させたところ、N,N-ジメチルアニリンを与える反応(N原子にメチル基を導入)が進行した。さらに、電子密度の高い芳香環を炭素求核剤として用いると、二酸化炭素がメチレン基(CH2)に変換されて2つの芳香環をメチレン架橋するC-C結合形成反応が進行することを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の3つの項目について順調に研究成果が得られたため。 (A) 二酸化炭素由来のN,N-置換ホルムアミドに対するワンポットでの有機金属試薬の付加反応 (B) 二酸化炭素由来のN,N-置換ホルムアミドを用いるVilsmeier反応 (C) 二酸化炭素をメチレン基に変換してジアリールメタンを得る反応
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今後の研究の推進方策 |
ヒドロシランを還元剤として用いる二酸化炭素のヒドロシリル化反応を経由して二酸化炭素に対してC-H結合形成反応とC-C結合形成反応を連続的に進行させる試みを実施したところ有望な結果が得られたため、今後はこれらの研究成果を継続・発展させて論文発表まで行う。 (A) 二酸化炭素由来のN,N-置換ホルムアミドに対するワンポットでの有機金属試薬の付加反応:二酸化炭素とヒドロシランとN-メチル-N-(2-ピリジル)アミンから無溶媒でCominsホルムアミドを与える触媒を探索したところ酢酸銅(II)が見つかった。この反応混合物へ有機金属反応剤(RMgX, RLiなど)を加えてアルデヒドを合成する。基質適用範囲を調査して汎用性を実証する。 (B) 二酸化炭素由来のN,N-置換ホルムアミドを用いるVilsmeier反応:無溶媒でテトラブチルアンモニウムアセテート(TBAA)と酢酸銅(II)を組み合わせる2成分触媒系で、二酸化炭素とフェニルシランとN-メチルアニリンからN-メチル-N-フェニルホルムアミドを合成しておき、ワンポットでVilsmeier反応を行い、芳香族アルデヒドを合成する。基質適用範囲を調査して汎用性を実証する。さらに、ワンポット反応によりβ-エナミノカルボニル化合物を合成する方法を検討する。 (C) 二酸化炭素をメチレン基に変換してジアリールメタンを得る反応:無溶媒・二酸化炭素雰囲気・30℃・フェニルシラン存在下、N-メチルアニリンをN,N-ジメチルアニリンへ変換(N原子にメチル基を導入)する触媒反応を詳しく調査する。さらに、電子密度の高い芳香環を炭素求核剤として用いると、二酸化炭素がメチレン基(CH2)に変換されて2つの芳香環をメチレン架橋するC-C結合形成を発見しているので、基質一般性を調査するとともに触媒機構を精査する。
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