研究課題/領域番号 |
20H02780
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
依馬 正 岡山大学, 自然科学学域, 教授 (20263626)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / C-H結合 / C-C結合 / 無溶媒触媒反応 / 触媒機構 |
研究実績の概要 |
ヒドロシランを還元剤として用いる二酸化炭素のヒドロシリル化反応を経由して、二酸化炭素に対してC-H結合形成反応とC-C結合形成反応を連続的に進行させて有用な化合物群を合成するとともに、その反応機構を研究した。 (A) アミンと二酸化炭素とフェニルシランからN,N-置換ホルムアミドを合成し、ワンポットでGrignard試薬を付加させてアルデヒドやアルコールを合成した。無溶媒で酢酸銅(II)を触媒として用いて二酸化炭素とフェニルシランとN-メチル-N-(2-ピリジル)アミンからN-メチル-N-(2-ピリジル)ホルムアミドを合成する反応では、触媒活性種として想定していた銅ヒドリド種 [CuH] をNMRで検出することに成功した。酢酸銅単独で触媒反応が進行するメカニズムを提唱した。 (B) 二酸化炭素由来のN,N-置換ホルムアミドを用いるVilsmeier反応により芳香族アルデヒドをワンポットで合成した。無溶媒でテトラブチルアンモニウムアセテートと酢酸銅(II)を組み合わせる2成分触媒系で、二酸化炭素とフェニルシランとN-メチルアニリンからN-メチル-N-フェニルホルムアミドが得られるが、ここでも触媒活性種として銅ヒドリド種 [CuH] を想定していた。銅ヒドリド種 [CuH] をNMRで直接検出できなかったが、既知の [CuH] に変換することで間接的に証明した。 (C) 二酸化炭素とフェニルシランとトリフェニルボランの存在下でN-メチルアニリンをN-メチル化してN,N-ジメチルアニリンを得る触媒反応について反応機構を精査した。触媒活性種として想定していたボロヒドリド種 [HBPh3]- をNMRで直接検出するとともに、DFT計算により触媒機構を提唱した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
以下の3つの項目について、かなり順調に研究成果が得られたため。 (A) 酢酸銅(II)を触媒として用いて二酸化炭素とフェニルシランとN-メチル-N-(2-ピリジル)アミンからN-メチル-N-(2-ピリジル)ホルムアミドを与える反応の機構を解明し、論文発表できた。 (B) テトラブチルアンモニウムアセテートと酢酸銅(II)を組み合わせる2成分触媒を用いて、二酸化炭素とフェニルシランとN-メチルアニリンからN-メチル-N-フェニルホルムアミドを与える反応の機構を解明し、論文発表できた。 (C) 二酸化炭素とフェニルシランの存在下でN-メチルアニリンをN-メチル化してN,N-ジメチルアニリンを合成する反応の機構を解明し、論文発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
ヒドロシランを還元剤として用いる二酸化炭素のヒドロシリル化反応を経由して、二酸化炭素に対してC-H結合形成反応とC-C結合形成反応を連続的に進行させる試みを令和2ー4年度に実施したところ、いくつもの興味深い研究成果が得られた。それらの一部は論文発表したが、未発表の内容も残されている。令和5年度は、これらの研究成果を継続・発展させて、本研究課題をより充実したものに仕上げる。 (A) トリフェニルボランとフェニルシランは、二酸化炭素の還元に適した触媒活性種(ボロヒドリド中間体)を発生する。この触媒システムを用いると、 インドールなどの電子豊富な芳香環のメチレン架橋反応が進行することを発見し、論文発表している。これを踏まえてさらに新規な二酸化炭素の高次還元反応(連続的なC-H結合形成反応とC-C結合形成反応)を探索する。例えば、ワンポットで二酸化炭素をホルミル基(CHO)やヒドロキシメチル基(CH2OH)やメチル基(CH3)に変換する。 (B) ヒドロシランやヒドロボランや三級アミンを還元剤としながら光照射するなど、既知の還元システムでは実現できないような新しい反応を進行させ て、二酸化炭素を有用な官能基へ変換できるサステナブルな有機合成手法を開発する。そのために、還元剤や基質や触媒を中心に反応条件を広く探索する。
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