研究課題/領域番号 |
20H02781
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
藤川 茂紀 九州大学, カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所, 教授 (60333332)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | CO2回収 / 気体分離 / ガス分離膜 / 自立ナノ膜 / 表面修飾 |
研究実績の概要 |
本研究では、この高いCO2透過性を有する自立性ポリジメチルシロキサン(PDMS)ナノ膜表面にのみ、CO2親和性を有する高分子超薄層を導入し、高い透過性と選択性を持つCO2分離膜の創製を目的とする。CO2親和性が期待される側鎖にアミノ基や複素環(イミダゾール・テトラゾールなど)を有するものやポリエチレングリコールなどは親水性であるため、疎水性のPDMS表面で均一な薄層形成を実現することが必須となる。一般的には酸素プラズマやオゾン処理などの親水化処理が行われるが、これら処理はPDMSのガス透過性を著しく低下させるため、別の方法論の開拓が必要である。様々な試行錯誤の結果、高分子の物理的絡まりを利用する方法で、安定な薄層皮膜処理ができることが明らかとなった。具体的には、CO2選択性が期待される高分子材料を、一旦厚膜状にキャストし、加熱によって高分子絡まりを誘起し、最終的に余剰の高分子材料を洗浄除去によって、PDMS表面に薄層を形成させる、というものである。これらの操作によって得られた薄層については、分光エリプソメトリーなどの解析により、表面未処理のPDMS膜表面に、厚さ数nm程度のアンンモニウム塩型側鎖を持つ高分子量高分子薄層を形成させることに成功した。この表面は長期間にわたって、高い親水性を保持しており、安定な高分子薄層が形成されていることが確認された。詳細な条件検討の結果、この方法では、PDMS表面に展開する高分子の分子量とガラス転移温度が安定な被膜形成において重要な要因となることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定してた疎水性表面をもつPDMSをプラズマ・オゾン処理などの親水化処理をせずに、親水性を有するCO2親和性高分子薄層を安定に形成させることに成功した。この部分は、もっとも解決が困難と想定されていたが、様々な条件検討や表面解析によって、この薄層形成が実現でき、現在投稿論文として準備中にまで到達できている。見出された方法では、特定の高分子でのみ適用可能な手法ではなく、一般的な高分子材料に展開可能なものであり、最終年度は、CO2分離特性向上を目指した研究に注力可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの研究活動を通じて蓄積されている、CO2選択分離に有効な高分子材料に関する知見を活かし、主要なCO2選択性高分子材料を使った、薄層の形成とそのガス透過性について評価する。特に、表層のCO2選択層とCO2との相互作用については、赤外分光評価や、水晶振動子を用いた吸着CO2量の評価などを通じて明らかにし、今後のCO2選択性向上に向けた必要分子構造用件を明らかにする。
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