研究課題/領域番号 |
20H02782
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸林 弘典 東北大学, 多元物質科学研究所, 講師 (00723280)
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研究分担者 |
宮田 智衆 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (10838949)
陣内 浩司 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (20303935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 結晶性高分子 / 階層構造 / 走査透過電子顕微鏡 / 4D-STEM / 電子回折 / 結晶構造 / ラメラ晶 / 配向 |
研究実績の概要 |
本研究では、ナノビーム電子回折法である4次元走査型透過電子顕微鏡(4D-STEM)法を用いて結晶性高分子のラメラ晶の時空間分布をナノメートルスケールで明らかにし、高分子の階層構造とその形成過程である結晶化の分子描像を得ることを目的とする。
初年度である本年度(2020年度)は、まず4D-STEM用の試料作製を行い、ラメラ晶の配向(すなわち、結晶化した分子鎖の配向)の異なるポリエチレン試料を作製し、クライオミクロトームによりその超薄切片を得た。電子染色した超薄切片について透過型電子顕微鏡観察を行い、明瞭な積層ラメラ構造を確認した。無染色試料について制限視野電子回折(SAED)測定を行い、マイクロメートルスケールで平均化された階層構造の情報(結晶構造や分子鎖の配向に関する情報)を得た。また、広角X線回折(WAXD)・小角X線散乱(SAXS)測定により、ポリエチレンの結晶構造と積層ラメラ構造に関する平均情報を得た。
次に4D-STEM測定条件の検討を行い、電子線照射条件を最適化した。そして、4D-STEM法を用いてポリエチレンの階層構造の空間分布の解析を行い、ラメラ晶の配向分布をナノメートルスケールで明らかにすることに成功した。加えて、SAEDやWAXD/SAXS で得られた平均構造情報と、4D-STEM法により得られた局所構造情報を平均化した情報を比較し、両者がよく一致したことから、4D-STEM法の測定の妥当性を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、結晶性高分子について (1) 試料作製、(2) 4D-STEM測定条件の検討、(3) 階層構造の空間分布の解析、(4) 階層構造の時空間分布の解析、を3年間で行う。
初年度である本年度(2020年度)は、(1), (2) について概ね当初の予定通り検討を終えることができた。さらに、次年度(2021年度)に行う予定の (3) を前倒しで行い、4D-STEM法を用いてポリエチレンのラメラ晶の配向分布をナノスケールで明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(2021年度)は、本年度(2020年度)に前倒しで進めていた (3) 階層構造の空間分布の解析、を引き続き行う。試料としてポリエチレンよりも電子線耐性が強く、階層構造の制御が容易な結晶性ポリスチレンを主として用いる。階層構造として、結晶性高分子に特徴的な球晶を対象とし、4D-STEM法を用いて球晶中のラメラ晶の空間分布をナノスケールで明らかにする。4D-STEM測定に適した球晶構造の形成を確認するため、偏光顕微鏡、X線回折、熱分析、位相差透過型電子顕微鏡法などを用いる。
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