研究課題/領域番号 |
20H02784
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石割 文崇 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00635807)
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研究分担者 |
福島 孝典 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (70281970)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ラダーポリマー / 高分子反応 / らせん / 刺激応答性 / ガス吸着 / ガス分離 |
研究実績の概要 |
新しい構造特性を持つポリマーの創成は、材料科学を中心に様々な分野に大きなインパクトを与える可能性がある。研究代表者はこれまでに、通常のポリマーと比べてより高次な構造要素を持つラダーポリマーの合成法の開拓に注力してきた。本研究では、(1)配座柔軟性ジアザシクロオクタン(DACO)含有ラダーポリマーに関する継続的研究に加え、(2)脈動運動を実現する片方巻らせん状ラダーポリマー、(3)二面性ラダーポリマーと言った、これまで考案すらされていなかった独創的かつ前例無き構造特性のラダーポリマーを世界に先駆けて開発し、それらの物性研究・機能開拓を行う。2021年度は上記(1)~(3)の3つの研究項目に関して下記のような成果が得られている。 (1) DACO含有ラダーポリマーの物性研究: N上にアシル基を有するDACO含有ラダーポリマーの合成法を新たに開発した。温度可変NMRおよびDFT計算よりそのDACO環の環反転挙動を調査したところ、これまでに合成してきたN-アルキルDACOよりも環反転に高い活性化エネルギーを有し、遅い環反転挙動になっていることがわかった。現在、固体状態における諸物性について調査中である。これ以外にもN上に酢酸基を有するDACOが弱塩基性水溶液により、室温下で瞬時に定量的に脱炭酸を進行させるという特異な反応性も見出した。 (2) 脈動らせん状ラダーポリマー:屈曲構造を有するC2キラルなモノマーのエナンチオピュア体からのラダー化重合と、その後の誘導化反応に成功しており、今後、その物性について調査する予定である。 (3)二面性ラダーポリマー:二面性構造を有するC2キラルなモノマーのエナンチオピュア体からのラダー化重合と、その後の誘導化反応に成功しており、今後、その物性について調査する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究項目(2)、(3)の脈動らせん状ラダーポリマーや二面性ラダーポリマーにおいては順調に目的ポリマーが合成できており、特に研究項目(1)では、研究開始当初は予想していなかった高効率高分子変換反応を見出すことができ、大きく研究が進展した。また、研究過程で特異な反応挙動も見いだしており新たな研究対象の発見にも至っている。これらのことから、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) DACO含有ラダーポリマーの物性研究: 2021年度に開発したN上にアシル基を有するDACO含有ラダーポリマーの、固体状態における諸物性について調査する。具体的には、粉末状態におけるガス吸着特性や、薄膜状態におけるガス透過性などを調査する。また、2021年度に見いだしたDACO上での特異的脱炭酸のメカニズムについても調査を進める。 (2) 脈動らせん状ラダーポリマー:得られたプロトタイプのポリマーに対し、温度変化、溶媒変化、酸/塩基添加など、様々な摂動を与え、その高次構造がどう変化するかを調査する。 (3)二面性ラダーポリマー:得られたプロトタイプのポリマーの一次構造を確定するために、モデル低分子を合成しその反応性から反応の幾何選択性を調査する。プロトタイプのポリマーの固体状態における高次構造をDSCやXRDにより調査してゆく。
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