研究課題/領域番号 |
20H02786
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
高須 昭則 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30303697)
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研究分担者 |
樋口 真弘 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50357836)
林 幹大 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70792654)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 環状高分子 / N-ヘテロ環状カルベン(NHC) / ソルビン酸エステル / ビニルモノマー / ルイス酸 / ジアステレオ選択性 / 立体規則性 |
研究実績の概要 |
1991年ArduengoらによってN-ヘテロ環状カルベン(NHC)が単離され、それを活用したラクトンやラクチドなどの開環重合について報告されるようになった。同時に、NHCを開始剤に用いたビニルモノマーのアニオン重合にも期待が集まったが、プロトン移動と極性転換反応によりモノマーの二量化が起こり、高分子合成への応用は失速した。申請者は、ルイス酸を添加することでプロトン移動を抑制できれば、NHCを用いたアニオン重合が可能になると考えた。具体的には、N-ヘテロ環状カルベニル基(末端)が脱離基として作用すれば環状高分子の合成が可能になる。開始末端であるN-ヘテロ環状カルベニル基は、対カチオンとして常に成長アニオンに隣接するので、モノマーが消費されたあとは閉環反応に選択的に関与する 。よって、高希釈条件を必要としない。ルイス酸の添加により、プロトン移動の抑制のみならずモノマーの重合反応性が高まり、重合速度 >> 閉環反応速度の顕著な違いが生まれると考えた。NHCの1つである1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン(NHCtBu)を用い、ルイス酸存在下でソルビン酸エステル類のアニオン重合を行った。-20°Cで反応させると、モノマー転化率は99%以上となり、数平均分子量 (Mn) 23000の単分散ポリマー(Mw/Mn=1.17)が得られた。予測通り、ルイス酸が成長末端に配位してプロトン移動を抑制し、高分子量体が得られたと考えた。生成ポリマーの構造をMALDI-TOF MSを用いて解析した結果、希釈条件を与えなかったにもかかわらず、環化による停止反応によって環状高分子が生成していることが示唆された。さらに13C NMR測定によって環状高分子の立体化学について調べた結果、90%程度のジアステレオ選択性が得られたが、立体規則性の制御には至っていなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的の高希釈条件を必要としない閉環反応により、環状高分子が合成でき、ジアステレオ選択性および立体規則性の評価まで達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究結果をもとに、他のビニルモノマーへと研究を展開させたい。
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