本研究では、一次構造を制御した両親媒性ランダム共重合体やホモポリマーを用い、その側鎖の自己組織化を鍵として、バルク状でのミクロ相分離や溶液中での会合構造の制御を目指す。R4年度は、4級アンモニウム塩と様々なアルキル基やオレイル基を導入したランダム共重合体を設計し、その熱物性とミクロ相分離挙動を調べた。その結果、オクチル基よりも長いアルキル基を導入したカチオン性共重合体は、水蒸気アニール処理により側鎖が相分離し、3-5 nm程度のドメイン間隔をもつラメラ構造を形成することがわかった。そのドメイン間隔はアルキル基の炭素数により精密に制御でき、この相分離挙動は、側鎖の炭素数と共重合組成に依存することが明らかとなった。さらに、本ポリマーをシリコン基板上にスピンコートし、中性子反射率測定を行ったところ、微細ラメラ構造が多重に積層化した薄膜を形成することがわかった。長鎖アルキルアンモニウム塩を側鎖にもつホモポリマーも同様の相分離挙動を示し、そのドメイン間隔はランダム共重合体よりも小さくなった。このように側鎖機能基の配置に応じて相分離構造やサイズを制御できることがわかった。また、親水性ポリエチレングリコール(PEG)と疎水性アルキル基を側鎖にもつ両親媒性ランダム共重合体ミセルの動的会合挙動を中性子小角散乱により詳細に解析し、その速度定数や交換機構を明らかにした。この動的会合挙動を生かして、ランダム共重合体ミセルを架橋点とする自己修復性と選択的接着性を併せもつハイドロゲルを創出した。また、親水性PEG鎖とカチオン性基、疎水性アルキル基を含む三元ランダム共重合体ミセルは、塩濃度により温度応答性を制御できることを見出した。このように、両親媒性高分子の側鎖の自己組織化を鍵として、微細ナノ構造をもつポリマー材料や動的会合挙動や温度応答性を示すポリマーミセル/ゲルを創出することに成功した。
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