研究課題/領域番号 |
20H02790
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 敬二 九州大学, 工学研究院, 教授 (20325509)
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研究分担者 |
春藤 淳臣 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40585915)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高分子界面 / ハイドロゲル / 凝集状態 / ダイナミクス / 粒子追跡法 |
研究実績の概要 |
2-メトキシエチルビニルエーテル(MOVE)と2-ビニルオキシエチルメタクリレート(VEM)からなるランダム共重合体poly(MOVE-r-VEM) (MrV)の架橋(c-MrV)薄膜を試料とし、水接触界面における分子鎖ダイナミクスを検討した。具体的には、直径(d)が30 nmおよび50 nmのプローブ粒子を界面層に配置し、その熱運動性を追跡した。粒子の動きは界面ダングリング鎖からの影響を受ける。平均二乗変位(MSD)値から、一般化Stokes-Einstein関係式(GSER)に基づき粘弾性パラメータの算出を試みた。複素弾性率(G*)を周波数(w)に対してプロットすると、いずれの試料においても下に凸の屈曲が観測された。wのべき乗は1/2から3/4へ変化したことから、低周波数側で観測された分子運動はビーズをばねで接続したRouseモデルにより説明でき、高周波数側の分子鎖運動はみみず鎖モデルに従った運動になることが明らかになった。周波数、すなわち観測時間に依存してダングリング鎖を表現できるモデルが異なることを考えれば、G*の非線形な周波数依存性は、最界面におけるダングリング鎖の緩和を反映していると考えられる。G′およびG"の角周波数依存性を評価すると、いずれの試料でも、低周波数領域においてG′はG"より大きく、高周波数領域では、G′はG"より小さくなった。測定周波数領域におけるG′値は、粒子径に依存したことから、界面領域において弾性率の勾配が存在することが明らかとなった。また、G′とG"が等しくなる交点の周波数から求めた緩和時間は、VEM含有量の増加に伴い短くなった。以上の粒子追跡の結果と、これまでに明らかにした摩擦特性との相関を検討するため、界面における摩擦係数と、同じ測定周波数におけるG"の関係を調べたところ、両者は互いに強い相関があることを確認した。したがって、最界面のダングリング鎖によるエネルギー損失が、摩擦係数の増大につながっていると結論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
界面におけるダングリング鎖のダイナミクスは、高分子ハイドロゲルの界面特性、ひいては機能に影響を及ぼすと考えられるため、分子鎖ダイナミクスの正確な理解は重要である。これまで、ハイドロゲル内部における分子鎖ダイナミクスは盛んに研究されてきた。その評価手法として、動的光散乱、中性子スピンエコー、中性子準弾性散乱、動的粘弾性測定などが挙げられる。しかしながら、これらの手法で得られる情報は、試料全体で平均化された値であり、界面選択的ではない。界面における分子鎖ダイナミクスを評価するために、水平力顕微鏡測定や、蛍光偏光解消測定などが応用された例はあるが、ハイドロゲル界面に対して行われた例はない。その背景のもと、粒子追跡に基づき、水接触界面における分子鎖ダイナミクスを検討した。その結果、最界面におけるダングリング鎖を反映した緩和を確認し、その緩和時間はVEM含有量の増加に伴い短くなることを明らかにした。以上のように、ハイドロゲル界面における分子鎖ダイナミクスを非荷重条件下で評価することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
21年度は、粒子追跡法に基づき、ハイドロゲル界面におけるダングリング鎖のダイナミクスを評価し、界面摩擦特性との相関を検討した。とくに、最界面のダングリング鎖によるエネルギー損失が摩擦係数の増大につながっていることを明らかにした。22年度は、ハイドロゲル界面の機能性として生体不活性性について着目し、これまで明らかにしてきた界面構造・物性との相関を明らかにする予定である。具体的には、ランダム共重合体poly(MOVE-r-VEM) (MrV)の架橋(c-MrV)薄膜を試料として用い、VEM含有量を変えて血小板の粘着挙動等を検討する。
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