研究課題/領域番号 |
20H02791
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
石田 康博 国立研究開発法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, チームリーダー (20343113)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ファージディスプレイ法 / 分子進化工学 / 親和性選択 / ライブラリ / 磁場配向 |
研究実績の概要 |
本年度は、仮説検証の仕上げを行なった。課題提案時点にて我々は、磁場によりファージを基板に対し垂直に配向することで、提示ペプチドの特異的相互作用を損なわずにファージ外殻とガラス基板との非特異的吸着が抑制できることを予備知見として持っており、一見、仮説検証は完了したかに見える。しかしながら、このモデル実験は「ペプチド非提示ファージ」または「ガラス吸着ファージ」単独で行われており、実際のファージディスプレイ法のように、異種ファージの共存下で行われていない点で、不完全である。両者が共存する状況で上記同じことを行ったとき、この結果の重ね合わせではない現象が起きてしまうならば、実際のファージディスプレイ法にこの方法を適応できない。早い段階でこの懸念を除くべく、ガラス吸着ファージ」と「ペプチド非提示ファージ」のモデル混合系(比率 = 1:99程度)を作成し、ガラス基板への吸着選別を通じ、「ガラス吸着ファージ」を濃縮するモデル実験を行った。すなわち、吸着選別後回収されたファージを培養し、無作為抽出した100個程度のコロニーのDNA配列を読むことにより、両ファージの比率を見積もった。その結果、2種類のファージが共存する場合においても、それぞれのファージ単独で実験した場合の重ね合わせとなる結果が確認された。すなわち、磁場配向により「ガラス吸着ファージ」の濃縮率を5倍に向上することが可能となり、本法の有用性が定量的かつより実勢的な形で実証された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
磁場配向により「ガラス吸着ファージ」の濃縮率を5倍に向上することが可能となり、本法の有用性が定量的かつより実勢的な形で実証された。
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今後の研究の推進方策 |
次なる課題として、実際のファージディスプレイ法において、磁場配向の影響を評価する。すなわち、約10^9種類のライブラリの中から、標的物質に対して最も強く結合するオリゴペプチドを選び出す操作を、磁場あり・磁場なしの条件で行い、結果を比較する。標的物質としては、協力研究者により通常のファージディスプレイ法に関する十分な知見が蓄積されており、Langmuir Blodgett膜(LB膜)にすることで基板に対し平滑な固定が可能であり、なおかつ抗インフルエンザ薬開発に繋がりうる魅力を持つ糖脂質「ガングリオシド」を選定する(T. Matsubara et al. FEBS Lett. 1999, 456, 253.)。磁場配向を使わない通常のファージディスプレイ法でも最適ペプチドの選別が可能な標的物質であるために、チャレンジングでないと思われるかもしれないが、磁場配向により、候補を絞るための吸着選別のサイクルを減らすことができる、あるいは、通常の方法では見落とされていた有用な候補を選別できる などの効果が見られたなら、その成果はファージディスプレイ法の高効率化に寄与することとなる。
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