研究課題/領域番号 |
20H02796
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
稲木 信介 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (70456268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | バイポーラ電気化学 / 導電性高分子 / 電解重合 / 電気泳動 / 微細構造プロセス / 高濃度電解液 |
研究実績の概要 |
π共役高分子やレドックス活性高分子(以下、導電性高分子)はその電荷移動特性や光学的特性、電気化学特性などから有機エレクトロニクスやエネルギーデバイスへの利用が期待されている。優れた素材開発が急伸する一方で、それらのデバイス実装を目指す上での成型プロセス(製膜・微細構造)は発展しているとは言い難い。有機エレクトロニクスの実現に向けた導電性高分子を配線する技術やエネルギーデバイス用に高表面積微細構造を作製する技術は複雑な装置に依存する。これら制約から脱却するため、高分子材料合成と実装プロセスを結ぶ新しい方法論の提案と、既存の枠組みにとらわれない新しい学理の構築が必要となる。 本研究では、導電性高分子の合成とその効果的な成型プロセスまでを一貫して意識した新しい方法論の開発を目的とする。具体的にはモノマーの電解重合の際に、電場による電気泳動効果を利用して自在に製膜あるいは高密度成型する。具体的には、(1)モノマーの電気泳動効果を利用した高密度導電性高分子シリンダーの創出、ならびに(2)導電性高分子の薄膜状自発成長の方向制御、について取り組む。 本年度は、課題(1)については、イオン性モノマーのテンプレート電解重合に成功し、その微細構造の解析や電子移動特性評価を行った。課題(2)については、電解メディアとして高濃度電解液を用いてバイポーラ電解重合を実施し、ファイバー構造を得ることに成功した。さらに電気化学発光分析により、得られた導電性高分子ファイバーは従来法で作製したものよりも高い導電性を有していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
両課題とも、当初計画は順調にクリアしている。その過程で、新たに高濃度電解液を用いるバイポーラ電気化学系の発見や、バイポーラ電気化学とミセル電解法との組み合わせによる有機薄膜作製法を見出すなど、当初計画以上に研究が進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、主に課題(2)についてさらに詳細に取り組む。バイポーラ電解重合における電解メディアとしてイオン液体や高濃度電解液を用いることにより優れた材料を得られているため、引き続き、導電性高分子構造体の成長速度やモルフォロジーに及ぼす電気化学パラメーターについて詳細を検討する。また、本研究を通じて新たに見出されたバイポーラミセル電解法を用いる有機化合物の薄膜化についても検討し、水系での優れた薄膜化プロセスとして確立する。
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