研究課題/領域番号 |
20H02797
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宇山 浩 大阪大学, 工学研究科, 教授 (70203594)
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研究分担者 |
徐 于懿 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10757678)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | バクテリアセルルース / 多糖類 / ポリビニルアルコール / 複合材料 / カルボキシメチルセルロース |
研究実績の概要 |
バクテリアセルロース(BC)ゲルは面方向においては均一なナノサイズのネットワーク構造を有するが、厚み方向にはミクロンサイズの層状構造をもつという異方性を有する。本研究はBCの特異な構造・性質を元に、BCの層間に刺激応答分子を挿入・固定化することにより、外部刺激に応答して一次元的に膨潤・収縮する材料を開発する。乾燥時にBCのセルロース鎖と多糖類・ポリビニルアルコール(PVA)の強い相互作用を発現させる材料設計により、非架橋で複合化した多糖類・PVA鎖のゲル中での動きを抑制せず、材料特性に応じた吸水能を獲得した。水溶性多糖類水溶液にBCを浸漬し、乾燥するという極めて簡単な手法でシート状複合材料が得られる。多糖類としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を使用した場合、BCゲルをCMC水溶液中、60℃、5時間、浸漬し、その後にゲルを取り出して105℃で1時間乾燥すると厚み方向に収縮したシートが得られた。これを水に膨潤すると一次元的に膨潤した。この膨潤・収縮は3回可能であったことから、CMCはBC層間に挿入され、吸水後もゲル中に保持されていると考えられる。膨潤率は最大約100倍に達した。また、BCにCMCを複合化すると圧縮強度が著しく向上した。フィラーを添加することでゲルの強度を向上する試みが多いが、CNFで構成されるBCゲルにCMCを添加することで著しい強度向上が見出されたことは興味深い。PVAを複合化することで膨潤度は低下するが一次元膨潤・収縮性は保持し、さらに得られた複合ゲルシートは折り曲げても割れない柔軟性が発現した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間軸としての進捗は多少の遅れが生じたが、BCゲルへの多糖類やPVAの挿入による複合化において、一次元膨潤・収縮性が見出され、繰り返しも可能であった。また、CMCとの複合化では高い膨潤率が達成でき、PVAとの複合化では優れた柔軟性が付与できた。複合化による顕著な物性向上も見出された。このように開発したBC複合材料が興味深い性質を示したため、本研究は概ね計画通りに進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に計画通りに研究を実施できたので、2年目も計画通りに実施する予定である。初年度に得た親水性ポリマーの挿入による一次元膨潤・収縮機能に関する知見を活かし、温度応答性ポリマー等の刺激応答性ポリマーに拡張し、外部刺激に一次元的に応答する材料の開発を目指す。
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