研究課題/領域番号 |
20H02798
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
佐藤 春実 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10288558)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 低波数ラマン分光法 / 分子間相互作用 / イメージング測定 / ポリマーブレンド |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、結晶性ポリマーブレンドの相分離と結晶化挙動を赤外分光法および低波数ラマン分光法を用いてモルフォロジーと分子間相互作用の可視化を行うことにある。令和2年度は、低波数領域のラマンスペクトル測定の二次元イメージング測定が可能とするための装置改良を試みた。新型コロナウィルスの影響で、R2年度の装置改良がやや遅れていたが、一部の予算について繰越申請を行い、R3年度にXYステージの組み込みを行うことができた。低波数ラマン分光器の装置改良により低波数領域と高波数領域のラマンスペクトルを同時に測定可能とし、さらにXYステージを組み込むことで、低波数領域と高波数領域の2次元ラマンイメージング測定が可能となる。 先ずは、測定した高分子化合物の低波数領域と高波数領域によるラマンスペクトル情報を確認し、低波数領域のラマンスペクトルから高分子の結晶構造に関する情報が得られること、および分子間相互作用に敏感なピークの存在を確認した。このことから、低波数領域のラマンスペクトルは、高分子の高次構造や分子間相互作用を反映していることが示された。 次に低波数領域と高波数領域の2次元ラマンイメージングが同時測定できることを確認し、低波数領域と高波数領域の両領域からより詳細な情報が得られることを確認した。高波数領域だけでは得られなかった分子間相互作用に関する情報が、低波数領域では得られるため、2つの領域を併せて解析することで、高分子の結晶化過程において結晶構造形成における分子間相互作用の変化についても可視化することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
該当年度に実施した研究の成果について、交付申請書に記載した「研究の目的および「研究実施計画」と照らし合わせて、R2年度については、新型コロナウィルスの影響で、R2年度の装置改良がやや遅れていたが、一部の予算について繰越申請を行い、R3年度にXYステージの組み込みを行うことができた。R2年度においては、装置の改良により低波数領域と高波数領域の両方を同時に測定できるようになり、低波数領域だけでなく、高波数領域も合わせて解析することで、より詳細な情報を得ることができる。また、XYステージを導入することで2次元ラマンイメージングの測定が可能となった。以上のことから、該当年度に実施した研究の成果については、繰越も含めておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、低波数領域と高波数領域の2次元ラマンイメージング同時測定ができることが確認できたので、測定対象であるポリマー試料をホモポリマーからポリマーブレンド系に拡張させ、結晶化と相分離が同時に進行するような結晶性高分子ポリマーブレンドのような複雑な系に対しても、測定・解析ができるようにする。最終的には深さ方向分析にも発展させ、3次元低波数高波数ラマンイメージング測定に挑戦する。
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