研究課題/領域番号 |
20H02800
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
天本 義史 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (70773159)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 複雑ネットワーク / ゴム弾性 / データサイエンス / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、複雑ネットワークの指標に基づき、エラストマーの繋がりに関する不均一性を評価し、ゴム弾性への影響を明らかにする事を提案した。本年度は、近接中心性に基づき、エラストマーのネットワーク構造を評価し、ゴム弾性への影響を検討した。バネ-ビーズモデルによる粗視化分子動力学シミュレーションに基づき、分岐数を4として、架橋密度のほぼ等しいエラストマーを計算機中で調製した。合成ネットワークとしてTetra-PEGゲルを模倣したエラストマー、人工的なネットワークとしてランダムに架橋したエラストマーをそれぞれ調製した。架橋点をノード、架橋点間の分子鎖をリンクとして近接中心性を算出し、ゴム弾性を決定付けるパラメータである一軸伸長下の架橋点間距離、及び、架橋点のゆらぎとの相関を評価した。初期の架橋点間距離を取り入れた修正中心性を用いる事で、ゴム弾性のパラメータを線型的に記述できる事が明らかとなった。これまで、エラストマー中の架橋点の繋がりを定量的に評価する手法がほとんどなかったため、本手法は、ネットワークの繋がりという観点から力学物性を説明するための一つの手法になると期待される。 来年度は、エラストマーの一軸伸長下の伸び切り鎖による応力集中について、取り組む。伸び切り鎖は、ゴムの破壊に繋がる重要な現象の一つである。本年度検討した近接中心性の他に、様々な中心性を評価し、伸び切り鎖とどのように相関があるか調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の予定通り複雑ネットワーク科学の観点からエラストマーの繋がりの定量化とゴム弾性への記述を達成し、学術論文への掲載に至っている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の途中で、近接中心性が伸び切り鎖とも相関がある傾向が見られたため、申請書の計画を変更し、重点的に取り組む予定である。
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