研究実績の概要 |
高分子ゲルの溶媒成分のエンジニアリングにより、ソフト材料の力学および化学的性質の独立制御を目指す。具体的にはデザイナーズソルベントとして知られるイオン液体(IL)をゲル化の溶媒に用い、これに溶解(膨潤)する高分子(網目)の合理設計によりメカノバイオロジー研究に貢献する非水系in vitro細胞足場材料を提案する。本年度までにILないしはイオンゲル界面における細胞培養に関する成果をまとめた原著論文を投稿した。また、イオンゲル材料設計の指針をまとめた総説を執筆し、本年度早々に受理された。(Chem. Rec., 2023 in press.)一方、本研究を進める中で以下のような新しい知見に接し最終年度までに、すべて論文化した。1.特定の反応条件下、IL中でメタクリル酸エステル等のビニルモノマーの重合を行うと超高分子量体が生成され、分子の絡み合い架橋に基づく高強度、自己修復性ゲルが得られる。(Sci. Adv. 2022, 8, eadd0226.)2.ここで得られるイオンゲルの力学物性は高分子網目のみならず溶媒構造で自在に制御可能である(Soft Matter 2022, 18, 8852.)。3.従来、極性の大小関係で説明されてきたアゾベンゼン含有高分子の溶解性が一定の分子量領域において完全に反転する。(Macromolecular Rapid Communications, 2023, in press.)現在、1,2の方法論を本研究で見出した細胞無毒性IL系に適用、ゲル界面の極性(化学的性質)と応力緩和、弾性率(力学的性質)の独立制御が可能なin vitro細胞足場材料の検討を進めている。また3.で得られた知見を踏まえ、アゾベンゼンの光異性化反応とゲル網目の粗密がカップリングした、細胞に力学ストレスを与えるゲル足場材料の設計に着手している。
|