研究実績の概要 |
本研究では、これまで研究代表者が開発してきた過渡円二色測定法を超えたシグナルーノイズ比を達成するような,新たな過渡円二色測定技術の開発を行う。また,これまで報告したヘリセン類の励起三重項状態の円二色スペクトル測定による新手法の実証実験とともに,生体関連系である光応答性タンパク質の構造ダイナミクスを捉える。 本年度は、研究代表者がすでに構築している時間分解円二色測定装置のパルスレーザーをLD励起固体レーザーに変更し,励起光源安定化に伴うシグナルーノイズ比の改善効果を確認することとした。サンプルとしてヘリセン誘導体(9ヘリセン)を用い,励起三重項状態における円二色スペクトルの測定を目指したところ,既存の装置において十分なシグナルーノイズ比の円二色スペクトル測定に成功した。また,LD励起固体レーザーへの変更は,レーザーの不具合により具体的な実験を行なう事が難しい状況であったが,本年度末に不具合の修正が完了し次年度行なう予定とした。 また,同時並行で,励起光強度変調を用いた過渡円二色測定手法の構築を行った。この手法では,モニター光と励起光の重なりを最適化することが,これまで以上に重要になると考えられる。これまで,モニター光としてキセノンランプを使用していた。キセノンランプはコリメートすることが技術的に難しく,さらに単一のレンズでは一点に集光することが困難であり,モニター光として使用する場合,励起光との重なりを調整するにはどこかで妥協する必要があった。励起光との重なりを最適化するには,よりコリメートしやすく空間的に狭い領域に集光可能な光源をモニタ光として導入することが望ましい。そこで,本研究ではモニタ光として,スーパーコンティニュアム白色光源を使用して装置の準備を順調に遂行中である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、まず一部装置の改良が残されているためそれに速やかに取り組む。次に,改良が終了した過渡円二色測定装置を用いヘリセン誘導体の励起三重項の過渡円二色スペクトル測定を行い,本研究で見込んだシグナルーノイズ比の改善を確認する。量子化学計算によるスペクトルシミュレーションを行い、そのスペクトルとヘリセン類の励起三重項状態の電子構造の解析を行う。 実証終了後,サイズの大きなヘリセン分子の励起三重項における過渡円二色スペクトル測定を行い,その結果を量子化学計算によるスペクトルシミュレーションと比較する。具体的にはすでに初年度取得済みのヘリセン誘導体の励起三重項状態における円二色スペクトル測定を行い,LD励起固体レーザーへの改良が効果的かどうかの実証を行なう。
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